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中立金利とターミナル金利

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中立金利とターミナル金利

公開日:2026.10.30

慶應義塾大学 経済学部 教授 株式会社いよぎん地域経済研究センター 顧問 白塚 重典

 金利のある世界に戻り、金融政策も政策金利をコントロールする伝統的な姿に戻っている。ただ、日本経済は30年ものあいだ金利のない世界にいたので、金融政策の金利調整について、十分理解されていないことも多いように思える。
 金融政策について語るとき、よく耳にする、似たような用語として、「中立金利」と「ターミナル金利」がある。中立金利は、景気を刺激も引き締めもしない「中立」的な政策金利の水準を指す。日銀の推計によると1.1〜2.5%の広いレンジとなっており、現時点では、下限よりも少し上の水準まで政策金利は上昇してきた。ただ、中立金利は、直接観察できる訳ではないので、政策金利を少しずつ引き上げながら、金融経済指標の動向を踏まえて、緩和度合いを評価していくことになる。現在の金利水準は、まだ中立金利よりも低く、金融環境も緩和的と判断されている。
 ターミナル金利は、金利引き上げ局面において最終的に到達する金利水準である。これは、中立金利と必ずしも一致する訳ではない。現在、日銀が注目している基調的なインフレ率がスムーズに2%の物価安定目標近くで安定していけば、利上げは中立金利周辺で終了し、ターミナル金利は中立金利程度となる。
 しかし、緩和が行き過ぎた結果、人々が先行きもインフレ率はもっと上昇していくだろうと考えるようになると(「長期インフレ予想」と言う)、ターミナル金利は、中立金利を超えた水準となり、本格的な金融引き締めが必要な局面となる。こうした状況を「ビハインド・ザ・カーブ」と言い、中央銀行は、金利引き上げテンポだけでなく、1回の利上げ幅も大きくせざるをえなくなる。最近では、コロナ禍後のインフレ高進の過程で、米欧の中央銀行はこうした事態に直面した。
 日本では、長期にわたるデフレの時代を経験し、人々の長期インフレ予想は、2%の物価安定目標よりも大幅に低い状態が続いていたため、これを2%近くまで押し上げる必要があった。量的・質的金融緩和(QQE)を2024年3月に解除した後も、日銀がゆっくりとしたペースでしか利上げをしてこなかった最大の理由がこの点にある。
 もちろん、この長期インフレ予想も直接観察できる訳ではなく、様々な関連するデータを使って検証していくことになる。ただ、日本でもインフレ率が2%を超える水準が続いていたことから、この長期インフレ予想は、ようやく2%近くまで上昇してきている。その意味で、日銀の金融政策は、基調的なインフレを押し上げる局面から、これを2%の物価安定目標近くに安定させていく新しい局面へと移っている。企業経営にも大きな影響を及ぼす、今後の長期金利の動向などを見通すうえでも、金融政策は大切な局面に入っている。

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