【法務編】
公益通報者保護法の改正
公開日:2026.10.29
Q. 公益通報者保護法が改正されたと聞きましたが、どのように改正されたのでしょうか。
A. 公益通報者の範囲がフリーランスにも拡大されました。また、公益通報後1年以内の解雇・懲戒は公益通報を理由としてされたものと推定されたり、公益通報を理由として解雇・懲戒をした者及び法人に対して刑事罰が科されるなど、公益通報者に対する不利益取扱いを抑止するための改正がなされました。
INDEX
公益通報者保護法とは?
「公益通報者保護法」は、勤め先の法令違反を認識した労働者等が、どこへどのような内容の通報を行えば、公益通報として通報を理由とする不利益な取扱いから保護されるかを明確化し、公益通報者の保護等を図ることを目的とした法律で、平成16年に制定されました。
公益通報とは?
「公益通報」とは、①労働者・退職者・役員が、②不正の目的でなく、③勤務先における、④刑事罰・過料の対象となる不正を、⑤通報すること、をいいます。
②については、不正の利益を得る目的や他人に損害を与える目的で通報した場合は、公益通報にはなりません。
③については、勤務先自体だけでなく、勤務先の役員・従業員等についての不正も対象となります。
公益通報者の保護の条件
公益通報者として保護されるための条件は、通報先により、以下のとおり異なります。
①事業者(内部通報)(「1号通報」)
不正があると思料すること
②行政機関(外部通報)(「2号通報」)
不正があると信ずるに足りる相当の理由があること(例:目撃した場合、証拠がある場合)
または不正があると思料し、氏名などを記載した書面を提出すること
③報道機関等(外部通報)(「3号通報」)
不正があると信ずるに足りる相当の理由があること
及び次のような事由があること(例:内部通報では不利益な取り扱いを受けると信ずる相当な理由、生命・身体への危害や財産に多額の損害が発生すると信ずる相当な理由)
公益通報者の保護の内容
公益通報として保護されるための条件を満たす場合、公益通報をした労働者等は、以下のとおり保護をされることになります。
①公益通報をした労働者を解雇することが無効になります。また、公益通報をした役員を解任することはできますが、役員から損害賠償請求をすることができます。
②公益通報をした労働者等に対して降格・減給その他の不利益な取り扱い(※配置転換、嫌がらせなども含みます)をすることが禁止されます。
③公益通報をした労働者等に対して、損害賠償請求をすることが制限されます。
事業者の体制整備義務
(1)常時使用する労働者が300人超の事業者には、以下の対応が義務付けられており、違反した場合には行政措置(助言・指導、勧告、勧告に従わない場合の公表)を受けることになります。
①内部通報の受付・調査等の業務を担う従事者の指定
②公益通報に適切に対応するための体制整備(例:内部通報窓口の設置、内部規程の策定、)
(2)また、全ての事業者について、従事者に対し、内部通報者を特定させる情報の守秘が義務付けられており、違反した場合には30万円以下の罰金が科されることになります。
令和7年改正法の内容
令和7年6月に公益通報者保護法が改正され、令和8年12月1日から改正法が施行されます。主な改正点は、以下のとおりです。
(1)公益通報対応体制整備の徹底
従事者の指定義務に違反する事業者に対し、勧告に従わない場合の命令権及び命令違反時の刑事罰(30万円以下の罰金)が新設されました。
また、事業者に対する立入検査権限や、報告懈怠・虚偽報告、検査拒否に対する刑事罰(30万円以下の罰金)が新設されました。
(2)公益通報者の範囲拡大
公益通報者の範囲に、「事業者と業務委託関係にあるフリーランス」及び「業務委託関係が終了して1年以内のフリーランス」が追加されました。
そして、公益通報を理由として、フリーランスと業務委託契約の解除その他の不利益な取り扱いをすることが禁止されました。
(3)公益通報阻害要因への対処
①事業者が、労働者等に対し、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること等によって公益通報を妨げる行為をすることが禁止され、これに違反してされた合意等の法律行為が無効になりました。
②事業者が、正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることが禁止されました。
(4)公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止
①通報後1年以内(※事業者が外部通報があったことを知って解雇・懲戒した場合は、事業者が知ってから1年以内)の解雇・懲戒は、公益通報を理由としてされたものと推定されることになりました(民事訴訟上の立証責任の転換)。
②公益通報を理由として労働者を解雇・懲戒をした者及び法人に対して、刑事罰(個人:6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、法人:3000万円以下の罰金)が科されることになりました。
最後に
企業の不祥事に対して労働者や役員が公益通報をすることは増えてきましたが、公益通報制度の内容につい ては十分に知られていません。企業が公益通報に対して適切な対応を取らなかった場合は、行政処分や刑事罰などの制裁が科されるだけでなく、労働者の企業に対する不信感を招く原因にもなります。労働者の離職を防ぐためにも、公益通報制度を理解した上で、公益通報に対しては適切な対応を取りましょう。
一覧へ戻る