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県内大学生の就職意向調査~若年時から県内産業・企業に接する機会の増加と認知度向上がカギ~

調査レポート

県内大学生の就職意向調査~若年時から県内産業・企業に接する機会の増加と認知度向上がカギ~

公開日:2026.08.06

寺尾 有理花

要旨

1.県内大学生(愛媛大学・松山大学)の県内就職率は近年低下傾向で、50%を下回って推移している。県内就職者の約8割は県内出身者で、そのうち文系の学生が約8割を占める。

2.就職希望地を決めた時期は「大学在学以降」が66.4%、「高校在学以前」が33.6%で、文系理系でみると理系のほうが「高校在学以前」の割合が高い。

3. 県内就職を希望する理由は「家族がいる」(49.4%)が最も多く、「県外企業のことをよく知らない」(35.6%)、「愛媛が好き」(35.0%)が続く。県外就職を希望する理由は「都会で生活したい」(55.6%)が最も多く、「愛媛にない業種・職種がある」(44.4%)となった。

4.県内産業・企業の認知度は「よく知っている」「少し知っている」を合わせると60%を超えるが、「よく知っている」割合は6.8%と、認知度は低い傾向がみられた。産業や企業を知る情報源を尋ねると、「メディア・インターネット」(50.3%)が最も高く、「大学の授業」(47.2%)が続く。

5.学生は就活時に就職情報サイトや企業のホームぺージを主な情報源にしており、職場の雰囲気や人間関係などよりリアルな情報を求めている。内定後においては「企業情報に関する口コミサイト」(11.6%)、「家族の意見」(12.8%)などを参考に企業を選んでいるようだ。

6.若年時に県内産業・企業に接する機会の増加や認知度向上、リアルな情報発信が県内就職促進のカギと言える。地域の担い手確保に向けて、これまで以上に産官学の連携が期待されている。

はじめに

 地方では若者の都市圏への流出が進んでおり、地域の担い手確保が大きな課題となっている。こうした状況を踏まえ、県内大学生の就職意向や就職観などを調査した。

県内大学生の就職状況

県内就職割合の推移

 愛媛大学・松山大学の学生が県内で就職する割合は低下傾向にあり、最近では50%を下回って推移している(図表-1)。

出身地別

 県内出身者の約7割、県外出身者の約2割が県内に就職しており、全体では県内出身者が県内就職者の約8割を占める(図表-2、3)。

文系理系別

 県内就職者のうち文系は約8割、理系は約2割となっている(図表-4)。

[2025年度卒の就職者(愛媛大学・松山大学)]

就職活動の流れ

アンケート調査方法

 愛媛大学と松山大学の学生を対象に、以下の調査方法でアンケートを実施した。

調査結果

 前述の県内就職者の出身地(図表-2、3)をみると、県内就職者の大半は県内出身者が占めている。

 そこで、県内就職の傾向を把握する観点から、県内就職割合が高い県内出身者に焦点を当ててまとめた。なお、県外出身者については最終ページのコラムで触れる。

就職地域

~就職希望地域~

 県内出身者が県内就職を希望する割合は、文系が70.5%、理系が48.6%となった(図表-6)。文系の方が県内就職の意向が強い結果となった。

~就職希望地を決めた時期~

 「大学在学以降」に就職希望地を決めた割合は66.4%、「高校在学以前」は33.6%で、大学在学中に決めている学生が多い(図表-7)。

 文系理系で比較すると、理系の方が「高校在学以前」の割合が高く、早期に県内か県外かを決めているようだ。

《大学生の声》

・高校生の頃から愛媛県で生活したいと思うようになり、県内で就職することを意識した。(理系・女性・4回生)


~県内就職希望の理由~

 全体では「家族がいる」(49.4%)が最も多く、「県外企業のことをよく知らない」(35.6%)、「愛媛が好き」(35.0%)が続く(図表-8)。

 「県外企業のことをよく知らない」は理系の方が低く、県外企業のことも調べたうえで県内就職を希望しているようだ。「希望する業種・職種がある」「就職したい企業がある」は理系の方が高くなっているのも同じ背景と考えられる。

 また「愛媛が好き」は理系の方が高い。

《大学生の声》

・家族や友人がいる地元への愛着がある。愛媛県は自然が多いところも好き。(理系・女性・4回生)

・県外の生活は慣れるまでに時間がかかる。愛媛県は生活面で不自由を感じない。(文系・男性・2回生)

・県内と県外の企業や業種を幅広く調べて、就職企業を選んだ。(理系・女性・4回生)


~県外就職希望の理由~

 全体では「都会で生活したい」(55.6%)が最も多く、「愛媛にない業種・職種がある」(44.4%)が続く(図表-9)。

 文系は都会での生活や業種・職種で県外を希望するのに対し、理系は都会での生活などよりも就職したい企業で県外就職を希望する傾向がみられた。

《大学生の声》

・県内に希望する業種がないため、県外での就職を決めた。希望する業種があれば県内就職したい。(理系・男性・4回生)

・愛媛県は都市部へのアクセスが悪く、県外で生活したい。(理系・男性・4回生)

 

県内産業・企業の認知度

 「よく知っている」(6.8%)、「少し知っている」(58.4%)を合わせると6割を超えている(図表-10)。一方で、「よく知っている」の割合が低く、認知の深さは限定的であった。

 文系理系で比較すると「少し知っている」を含めた認知度は理系の方が高い。

《大学生の声》

・日常生活で目に触れる企業以外知らない。(文系・男性・2回生)

・愛媛県の主要な産業は分かるが、企業名はよく分からない。(理系・男性・2回生)

・専攻は電気電子工学だが、計測やシステム系以外で自身の知識を活かせる県内企業があるか気になる。(理系・女性・大学院2回生)

・専攻分野に関する県内企業を知らない人が多いと思う。(理系・女性・大学院2回生)

 

 「よく知っている」、「少し知っている」と回答した学生に、企業や産業を知る情報源を尋ねると、「メディア・インターネット」(50.3%)が最も高く、「大学の授業」(47.2%)が続く(図表-11)。メディアやインターネットのほか、大学の授業の役割が大きいことが示された。

 一方で学生と企業がリアルに接する「職場体験・インターンシップ」の割合は低く、学生が欲しい情報を提供できていない可能性がある。

《大学生の声》

・県内企業を認知したのは企業の人が講師となったキャリアに関する大学講義だった。(理系・男性・4回生)

・コロナのため中学校の職場体験学習は実施されなかった。(文系・男性・2回生)

 

希望業種

 文系業種においては「公務員・団体職員」(31.9%)と「金融・保険」(25.6%)の県内希望の割合が高い。理系業種は幅広い業種で県外希望が高い(図表-12)。

 理系業種で県外希望が高いことは、希望業種や企業が県内に少ないことが背景にあるようだ。

《大学生の声》

・愛媛県で就職するなら、公務員か金融が安定していると思う。(文系・男性・2回生)

・自分が興味のある分野を研究する企業は県内にない。(理系・男性・4回生)

 

インターンシップ・採用試験のエントリー社数

 インターンでは「1~3社」(65.5%)に絞り込む割合が高く、特に理系(78.6%)で傾向が強い(図表-13)。

 採用試験では「1~3社」(50.0%)が最も多いが、4社以上の回答も一定数あった。理系では文系に比べてエントリー社数が多い傾向がみられた。

《大学生の声》

・就職したい業種を決めているのでエントリーは少なめになる。(文系・男性・2回生)

・県外企業と県内企業の両方にエントリーする予定。(理系・男性・2回生)

 

就職企業を選ぶ際に重視すること

 就職する1社に絞る際に最も重視することは「ワークライフバランス」(28.0%)、「自身のやりがい」(22.8%)、「給与水準」(20.8%)、「職場の雰囲気」(20.8%)の割合が高い(図表-14)。

 そこで、上位の4項目についてそれぞれまとめた。

■ワークライフバランス

 労働条件で重視する項目をみると、「休日・休暇が多い」(66.8%)が最も多く、「希望する勤務地で働ける」(59.2%)、「残業が少ない」(54.4%)が続く(図表-15)。ワークライフバランスに関係する「休日や休暇の多さ」「残業が少ない」が重視されており、仕事以外の生活も大切にしたいという意識がうかがえる。

《大学生の声》

・趣味や好きなことにかける時間を大切にしたい。(文系・男性・2回生)

・休暇や残業はとても気になる。(理系・女性・4回生)

 

■自身のやりがい

 自身について重視することは「やりがい・達成感がある」(42.4%)が最も多く、「自分のやりたい仕事・業種に携われる」(39.6%)「自分の能力を生かせる仕事・業種である」(38.0%)が続く(図表-16)。

《大学生の声》

・専攻分野を生かすことができる仕事に就きたい。(理系・男性・4回生)

 

■給与水準

 初任給に求める水準は、令和7年度の愛媛県の初任給水準(23万7千円)を上回る割合が68.4%となった(図表-17、18)。文系理系で比較すると、理系の方が求める給与水準は高い。

 愛媛県は全国、東京の水準を下回っており、県内就職を高めるうえでは大きな課題となっている。

《大学生の声》

・県外の生活では出費も多くなるため給与水準は高めになる。(理系・女性・大学院2回生)

・初任給だけでなく、ボーナスなども含めた年収を重視している。(理系・男性・1回生)

 

■職場の雰囲気

 働くうえで不安なことは「上司・先輩とうまくやっていけるか」(64.0%)が最も多く、「仕事を覚えられるか」(59.6%)が続く(図表-19)。学生は職場の雰囲気に関係する「上司・先輩とうまくやっていけるか」に大きな不安を感じているようだ。

《大学生の声》

・職場にどんな人がいるか気になる。(文系・男性・2回生)

・企業によって雰囲気は違うと思うので自分に合うか不安。(文系・男性・2回生)

・実際の雰囲気は口コミサイトやインターンシップで確認したい。(文系・男性・3回生)

 

情報収集源

 就職活動前、就職活動中、就職活動後でみると、「就職情報サイト」と「企業ホームページ」はどの段階でも使用割合が高い。一方で、就職活動後に内定先の企業から就職する企業を決める際は、「企業情報に関する口コミサイト」(11.6%)、「家族の意見」(12.8%)など、よりリアルな情報を求めているようだ(図表-20)。

《大学生の声》(情報収集源)

・ウェブ上で見つけられない企業は就職対象にならないと思う。(理系・男性・4回生)

・企業HPよりも就職情報サイトや口コミサイトの方が情報量は多いと思う。(理系・女性・大学院2回生)

 

《大学生の声》(企業に関するリアルな情報)

・実際の業務内容や職場の人間関係などを、実際に働いている人から聞きたい。(文系・男性・2回生)

・インターンシップは企業の良い面が強調されていると思うので、口コミサイトで企業に関する悪い情報についても確認していた。(理系・女性・4回生)

・ネット上で情報収集はできるが、企業訪問やインターンへの参加を通して自分の目で確認したい。(理系・男性・2回生)

おわりに

 県内大学生(愛媛大学・松山大学)が県内で就職する割合は低下傾向にあり、最近では50%を下回って推移している。このままでは地域の担い手不足の深刻化が懸念される。


 アンケート結果によると、県内出身の学生のうち文系は約7割、理系は約5割が県内を希望する結果となった。希望する理由で特徴的なのは「家族がいる」、「愛媛が好き」の割合が高いことが挙げられる。大学生へのヒアリングでは「愛媛が好き」の背景として、家族や友人がいることや住みやすいなどの声が多く聞かれた。

 就職地を決める時期では約3割が高校生以前に決めており、職場体験学習などを通じて若年時から県内産業や企業に触れる機会をつくることが重要と言える。一方で産業や企業を「よく知っている」と答えた割合は6.8%に留まっており、認知度の向上は大きな課題である。ヒアリングでも「産業は知っているが企業名は分からない」との声が聞かれており、「大学の授業」や「職場体験・インターンシップ」の更なる充実が求められる。


 学生は内定後に就職する企業を絞り込む際、口コミサイトやインターンシップを情報源にして、働いている人の声、職場の雰囲気などのリアルな情報を求めていることが分かった。学生と社員が交流する機会を増やすなど、ポジティブな情報だけに限らないリアルな情報発信の工夫が必要だろう。


 今回の調査結果によると、若年時に県内産業・企業に接する機会の増加や認知度向上、リアルな情報発信が県内就職促進のカギと言える。またシビックプライドの醸成により主体的に地域に関わる若者が増えることも有効策の一つと言えよう。地域の担い手確保に向けて、これまで以上に産官学の連携が期待される。

 

[コラム]県外出身者の動向

 学生の約半数を占める県外出身者のうち、約2割が県内に就職している(図表-2再掲)。県内就職希望の理由は「愛媛が好き」(52.0%)が最も多く、「友人・知人がいる」(28.0%)、「就職したい企業がある」(28.0%)が続く(図表−21)。

 企業・産業の情報源は「大学の授業」(73.5%)が突出して多い(図表−22)。

 「大学の授業」を軸に県内産業・企業に関する情報を伝えるとともに、「愛媛が好き」になる関係づくりが県内就職の向上のカギとなるだろう。

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