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愛媛大学社会共創学部とIRCによる結婚観に関する共同調査

調査レポート

愛媛大学社会共創学部とIRCによる結婚観に関する共同調査

公開日:2026.06.24

續木 美和子


調査背景と目的】

 人口減少は地域社会の存続を左右する重要な課題であり、その要因の一つとして出生数の低下が挙げられる。その背景には若年層の価値観や意識の変化が影響していると考えられる。

 こうした点をふまえ、愛媛大学社会共創学部の学生・教員といよぎん地域経済研究センター(以下、IRC)は、人口減少の課題解決につなげる共同調査プロジェクトを開始した。このプロジェクトは2025年4月に開始し、愛媛大学の教員やIRCによるサポートのもと大学生が主体となって統計手法を用いた調査分析を実施するもので、今日の若者の価値観や意識の変化を反映した調査、エビデンスに基づいた客観的な分析を通じて、人口減少の課題解決につなげることを目的としている。


要旨

1.愛媛県の婚姻数および婚姻率は減少傾向が続いており、婚姻率は全国平均を下回っている。出生の大半が婚姻内で生じているため、婚姻数の減少は出生数の減少に直結する。
2.県内未婚者の結婚意向は全体として高い水準にあるものの、実際の行動には様々なハードルが存在している。結婚意向を持つ層にとっては「適当な相手にめぐり会わないこと」が男女ともに最大の理由となっている一方で、結婚意向を持たない層においては、経済的な不安やキャリアへの影響以上に、「自由や気楽さを失いたくない」「結婚にメリットを感じない」といった、時間的制約や心理的な要因が結婚を遠ざける強い理由となっている。
3.「結婚意向」についてどのような要因が関連しているのかを検討するための計量分析では、相手の「職業」や「家事・育児への取り組みや考え方」を重視すること、「将来に対するライフプラン」を明確に持っていること、「ライフプランの学習経験」があること、地元愛が強いこと(特に女性)や地域のイベント等への参加意向が高いことなどで結婚意向と有意な正の相関を示した。
4.若年層の結婚意向を高め、実際の結婚行動へと繫げるためには、単なる出会いの場の提供や経済的支援にとどまらず、若者が「この地域で、自らの思い描くライフプランを実現できる」という見通しを持てることが重要である。

はじめに

 全国の婚姻数は1972年をピークに長期的な減少傾向にあり、2023年は約47万組(1972年比▲56.8%)と戦後最少を記録した。足元では、コロナ禍による急減の反動もあり、微増に転じているが、出生数の減少に歯止めがかからない状況が続いている。

 一方で、未婚者の結婚・出産についての考え方に関する代表的な全国調査として、国立社会保障・人口問題研究所が実施する「出生動向基本調査・独身者調査」があり、ここでは若年層において結婚は標準的なライフコースとして強く意識されている。結婚意向に関しては多様な要因が指摘されているが、その背景にある価値観は時代や社会状況によって変化しうる。

 こうした中、本調査では県内の婚姻をめぐる動向を振り返るとともに、若年層へのアンケート結果をもとに、将来に対する価値観や人や異性とのかかわり、結婚に対する意向などについて、その項目と結婚意向についての変数を用いて、結婚意向に関連する要因を検討した。


県内における婚姻をめぐる状況

01婚姻数・婚姻率
愛媛県の婚姻数および婚姻率は減少傾向が続いており、婚姻率は全国平均を下回っている(図表−1)。

02婚姻数と出生数の関係
出生の大半が婚姻内で生じているため、婚姻数の減少は出生数の減少に直結する(図表−2)。

結婚観に関するアンケート調査

婚姻率の低下の要因を探るにあたり、まず県内の未婚者と社会共創学部の学生に結婚に対する意識調査を行った。

01県内未婚者向けアンケート

02大学生向けアンケート

03県内未婚者と大学生の結婚意向
社会共創学部の学生の結婚意向は男女ともに9割程度ある一方で、県内未婚者の結婚意向は6割程度まで低下することが確認できた(図表−3)。

結婚観に関する共同調査

01調査の方向性

 本調査では若年層の結婚意向に関する要因を統計的な手法を用いて分析するが、前述した大学生向けのアンケート調査では「結婚したい」が9割に達しており、「結婚したい」「結婚したくない」に分けて統計処理(ロジット分析)することが難しいため、今回は県内未婚者向けのアンケート調査のみを分析対象とする。

~調査の特徴~

[統計手法を用いた調査結果の深堀り]

 未婚者向けの意識調査で得られたデータをもとに統計手法を用いた分析(計量分析)を実施し、エビデンスによる客観的な調査を行う。

[大学生が主体的に分析]

 大学生に実践的な研究の場を提供するとともに、近い将来に結婚に向き合うこととなる大学生の意見を取り入れることで若年層の価値観を反映した分析を行う。

[統計的な手法(ロジット分析)]

 結果が2値(または多値)の変数である場合に、その結果の「起こりやすさ(確率)」を予測・説明するための統計手法


02結婚意向

 まず、結婚意向について全体のサンプル(n=315)をもとに男女別で集計したところ、結婚意向があるサンプルは図表−3のとおり、男性で56.7%、女性で67.0%であった。これは、女性のほうが結婚意向が高い傾向にあるものの、一定程度は結婚に対して消極的であることを示唆している。

 次に、結婚意向があるサンプル(n=198)を対象に、現在独身でいる理由について尋ねたところ、「適当な相手にまだめぐり会わないから」という回答が男女ともに最も多く見られた(図表−4)。この結果は、結婚を希望している若年層にとって、適当な相手を見つけることが一番の大きなハードルとなっていることを示唆している。

 また、結婚意向がないサンプル(n=117)を対象にその理由について尋ねたところ、男女ともに「自由や気楽さを失いたくないから」、「結婚にメリットを感じないから」という回答が多く、「経済的な不安があるから」、「仕事や趣味を優先したいから」といった理由よりも多い回答がみられた(図表−5)。この結果は、結婚意向を持たない理由として、金銭的な不安やキャリア上での制約よりも、時間的な制約や自身の行動の自由に対してネックと感じている回答者が多い点が示唆される。

 この点について、男女差が特に見られたのは、「結婚したいと思う相手がいないから」、「家事育児の負担が大きいから」といった理由がみられ、これらの項目は女性のサンプルのほうが多く理由としてあげていた。特に家事育児については、男女間の分担が実際には公平ではなく、特に女性において、これらの「見えない労働」が結婚をためらう理由の一因となっている可能性が考えられる。

03統計的手法を用いたアプローチ
次に、「結婚意向」についてどのような要因が関連しているのかを検討するために、回帰モデルを用いた分析を行った。具体的には、「結婚したい」と「どちらかといえば結婚したい」と回答したサンプルを「結婚したい」群、「どちらかといえば結婚したくない」と「結婚したくない」と回答したサンプルを「結婚したくない」群とみなして分析を行った。
この二つの変数を被説明変数とし、「結婚しない理由」を除いた変数を説明変数としたロジット分析を実施した。ロジット分析で用いるモデルについては、このプロジェクトに参加している大学生へのヒアリングを通して、類似性の高い変数をいくつか集めて1つのモデルとし、こうしたモデルを合計5つ作成した。それらのモデルにおける説明変数とそれぞれのモデルの名称については図表−6のとおりである。

A相手に求める条件

 「相手に求める条件」と結婚意向との関係をみると、全体のサンプルでは結婚相手に重視する項目として「職業」や「家事・育児への取り組みや考え方」を挙げている回答者は、結婚意向が高い傾向がみられ、女性に限定した分析においては、「容姿」が結婚意向と相関している関係がみられた(図表−7)。

 一方で、「経済力」を重視する項目として挙げた回答者は、結婚意向が低い傾向がみられた。この結果は、逆向きに解釈すれば、結婚意向が高い回答者は、職業や家事・育児への取り組みや考え方を重視する一方で、経済力を重視しない傾向にあると捉えることができる。この点は、経済力を過度に重視する回答者において、実際にそうした条件を満たす相手がおらず、「それなら結婚しなくてもよい」といった状態で、結婚意向が下がっている可能性が示唆される。経済力を重視しすぎることが結婚願望の低下につながっていると考えられるため、結婚に対する支援金や福利厚生(住宅手当や家族手当など)を拡充し、金銭的な不安を軽減することが、結婚に対するハードルを下げることにつながるかもしれない。

~オッズ比と標準誤差~

⃝オッズ比:「ある事象が起こる確率」と「起こらない確率」の比

⃝標準誤差:標本統計量のばらつきを表す指標


B恋愛に関する価値観・経験

 「恋愛に関する価値観・経験」と結婚意向との相関関係をみると、交際経験の有無については、全体と男女別のサンプルで一貫して交際経験がある回答者は結婚意向を持つ傾向がみられた(図表−8)。この結果から、男女ともに交際経験と結婚意向がリンクする傾向にある点が示唆される。

 マッチングアプリの利用については、全体の結果において、経験があるサンプルのほうが結婚意向が高い傾向がみられた一方で、男女別の結果では有意とならなかった。なお、この結果については、マッチングアプリの利用により結婚意向が上がるというよりも、結婚の目的としてマッチングアプリを利用しているという逆因果が疑われる。

 最後に、他人からの好意に対する感情(数値が高いほど好意的)については、好意的な感情を抱くほど結婚意向が高い傾向がみられた。この結果から、他人からの好意に抵抗がない人のほうが、結婚意向が高い傾向にあることがわかった。この点は直感と整合する結果であり、恋愛における感情と結婚意向はリンクしていることを示唆する結果である。


C将来に対する価値観・行動

 「将来に対する価値観・行動」と結婚意向との関係をみると、ライフプランの有無には、ライフプランを持っている回答者のほうが結婚意向が高い傾向にあることがわかった(図表−9)。また、オッズ比の男女差に着目すると、女性のほうがオッズ比が高く、ライフプランの有無と結婚意向との相関がより顕著であった。このことは、特に女性において、出産適齢期の問題や、出産・育児に伴うキャリアへの影響といった課題が生じるため、女性のほうが男性に比べて、ライフプランに結婚が組み込まれやすい傾向にあるためと考えられる。

 また、貯蓄額については、女性のみに正の相関がみられた。この結果からは、将来的に結婚を考えている回答者の間で、具体的な貯蓄活動が行われている可能性が示唆される。一方で、投資額については、結婚意向との間に負の相関がみられた。この点については、投資には老後の資産形成としての側面もあるため、結婚することや子どもを持つことに関心のない回答者のほうが、自身の将来のために投資する傾向が強かった可能性が考えられる。

D人とのかかわり

 「人とのかかわり」と結婚意向との関係をみると、地元への愛着度では、全体と女性のサンプルのみで統計的に有意となっており、地元への愛着度が高い回答者ほど結婚意向を有する傾向がみられた(図表−10)。この結果については、地元への愛着度が強い回答者は、地元での結婚や子育てといったライフプランをイメージしやすいことが考えられる。そのため、地元で親や親戚などのサポートを得ることが期待しやすく、結婚や子育てに関するハードルが下がった結果として、こうした相関がみられた可能性がある。

 また、趣味イベントへの参加意向に注目すると、全体、男性、女性のいずれのサンプルにおいても、結婚意向との間に正の相関がみられた。この結果から、結婚意向のある層は、質問項目で挙げたような音楽祭やスポーツ観戦、お祭りなどのイベントを好む傾向にあるため、すでに結婚を希望している男女のマッチングイベントとして、こうしたイベントの開催が効果的である可能性が示唆される。ただし、この参加意向については、「音楽祭」「スポーツ観戦」「お祭り」と対象を特定したため、外向的な特性とリンクしやすい内容となっており、このような性格的要因が媒介となって相関がみられた可能性にも留意すべきである。

 Eライフプランの学習経験

 「ライフプランの学習経験」と結婚意向との関係をみると、企業等におけるセミナーでの学習経験と、高校や大学などの授業における学習経験の2つの変数について関係を検討した(図表−11)。分析の結果、男性と女性で異なる傾向がみられ、男性においては企業等におけるセミナーでの学習経験が、女性においては高校・大学などの授業における学習経験が、それぞれ結婚意向と相関しているという結果が得られた。この結果から、有効な学習機会の形態に男女間で違いはあるものの、ライフプランの学習を通して将来のより具体的なイメージが描けるようになった結果、結婚意向が高まった可能性が考えられる。

 Fまとめ

 一連の分析からは、第一に若年層の結婚意向は全体として高い水準にあるものの(男性57%、女性67%)、実際の行動には様々なハードルが存在していることが分かった。

 結婚意向を持つ層にとっては「適当な相手にめぐり会わないこと」が男女ともに最大の理由となっており、出会いの機会の不足が大きな課題であることが示された。一方で、結婚意向を持たない層においては、経済的な不安やキャリアへの影響以上に、「自由や気楽さを失いたくない」「結婚にメリットを感じない」といった、時間的制約や心理的な要因が結婚を遠ざける強い理由となっていることが確認された。

第二に、計量分析を通じて、結婚意向と関連する具体的な要因についての傾向が明らかとなった。

結婚相手に求める条件

 相手の「職業」や「家事・育児への取り組みや考え方」を重視する人ほど、結婚意向が高い傾向がみられた。これは、安定した生活基盤とともに、共働き・共育てを前提としたパートナーシップを重視する人のほうが結婚意向を持つ傾向を示唆している。

◆恋愛経験と手段

 交際経験の有無や、他人からの好意に対する反応は、結婚意向と強い正の相関(特に女性で顕著)を示し、マッチングアプリの利用経験は結婚意向と正の相関を示した。ただし、この相関については逆の因果関係が強く疑われる。

◆将来への見通しと行動

 将来に対する「ライフプラン」を明確に持っていることや、月々の「貯蓄額」が高いことは、結婚意向と有意な正の相関を示した。

◆地域社会とのつながりと教育

 地元愛が強いこと(特に女性)や、地域のイベント等への参加意向が高いことは結婚意向と結びつきやすいことが示された。

 ◆ライフプランの学習経験

 学校等において「ライフプランの学習経験」がある回答者ほど、将来に対するイメージが明確になり、結婚に対しても前向きな意向を持つ傾向が確認された。

提言

こうした知見を踏まえ、地域社会や自治体が取り組むべき具体的な政策提言として、以下の4点を提案する。


01地元愛の醸成と地域定住支援

 まず、地元愛(シビックプライド)の醸成と地域定住支援である。「地元愛」が結婚意向と正の相関を示したことは、将来の生活基盤や居住地の明確さが結婚への心理的ハードルを下げることを示唆している。したがって、大学や地元企業が連携した長期インターンシップの拡充や地元就職者への奨学金返済支援制度を整備し、「地元で働き、暮らす」イメージの具体化を促進すべきである。また、SNS等を活用して豊かな暮らしのイメージを戦略的に発信し、特に女性や30代が「この街で家庭を築きたい」と思える環境を整えることが求められる。

 

02ライフプラン教育の体系化と情報提供

 次に、将来設計を促すライフプラン教育の体系化と情報提供である。将来の「ライフプランの有無」や「学校でのセミナー受講経験」が結婚意向を高める重要な要因である。これに基づき、学校教育におけるライフプラン学習機会(人生年表作成やワークショップ)を確保することが重要であると考える。あわせて、ライフステージの変化を意識し始める20代後半の層に向けて、県内でのリアルな暮らしやキャリアを想起させる短編動画コンテンツ等の効果的な情報発信を展開することも有効である可能性がある。

 

03対面イベントの拡充

 次に、コミュニティ型対面イベントの拡充である。社会人、特に男性において「出会いの機会(行動量)」が結婚意向を規定している。マッチングアプリの利用は、全体の結果としては有意となったものの、男女別の結果では有意ではなかった。この結果から、オンラインよりも、趣味・スポーツ・ボランティア等を通じた「対面で継続的なコミュニティ型イベント(サークル活動等)」のほうが出会いの場として効果的である可能性がある。

 

04経済的負担の軽減

 最後に経済的負担の軽減である。経済的要因が結婚の重要な障壁であることを考えると、若年層向け住宅補助・初期費用補助などの直接的支援、企業による賃上げなども重要である可能性がある。

おわりに

この共同調査により、若年層の結婚意向を高め、実際の結婚行動へと繫げるためには、単なる出会いの場の提供や経済的支援にとどまらず、若者が「この地域で、自らの思い描くライフプランを実現できる」という見通しを持てることが重要であることが明らかになった。人口減少の緩和策として実効性のあるアプローチを展開するためには、自治体、企業、教育機関が連携し、若年期からの継続的なライフプラン教育や、安心して働き暮らせる地域環境づくりなど、多角的かつ長期的な視点に基づく地域ぐるみの支援体制の構築が求められる。

(共同調査プロジェクトメンバー一同)

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