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各種調査レポート

【法務編】 固定残業代(みなし残業代)制

経営・実務Q&A

【法務編】
固定残業代(みなし残業代)制

公開日:2026.06.24

弁護士法人たいよう 弁護士 池本 真彦

Q. 社内で固定残業代(みなし残業代)制を導入しようと考えていますが、どのような手続を踏めば良いでしょうか。

A. 固定残業代(みなし残業代)制を導入する場合、基本給の一部を固定残業代として支払うことについて、従業員との間で合意をする必要があります。
また、「明確区分性要件」や「対価性要件」などの要件を満たす形で制度を設ける必要があります。

固定残業代(みなし残業代)制とは

 固定残業代(みなし残業代)制とは、従業員の実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ定めた一定時間分の残業代(時間外手当)を、毎月固定額で支払う制度のことです。

 例えば、基本給とは別に、「固定残業代(30時間分)として5万円を支給する」という形で給与を支給するとします。その場合、実際の残業時間が30時間未満であっても、固定残業代として5万円を支給することになります。

 他方、残業時間が30時間を超えた場合は、30時間を超えた部分(残業時間が35時間であった場合は5時間分)の残業代を別途支給することになります。


固定残業代制のメリット・デメリット

 固定残業代制を導入することにより、会社側としては、人件費の見通しが立てやすくなったり、毎月の給与計算が容易になるというメリットがあります。また、人材を採用する際、求人票に記載する給与の総支給額(基本給+固定残業代)が高くなるため、求職者の目を引きやすく、人材採用につながりやすくなるというメリットもあります。

 他方、残業が発生しなくても固定残業代を支払う必要があるため、人件費の負担が大きくなるというデメリットがあります。


固定残業代制の合意

 固定残業代制を導入する場合、基本給の一部を固定残業代として支給することについて、従業員との間での合意が必要になります。

 雇用契約書や就業規則に固定残業代の定めがある場合は、合意が認められることが多いですが、就業規則が周知されていなかったり、不利益変更の要件を満たしていなかったりすると、固定残業代が雇用契約の内容になっていないと判断されることもあります。

 他方、雇用契約書や就業規則に固定残業代の定めがない場合は、合意が否定されることが多いため、固定残業代制を導入する場合は、雇用契約書や就業規則に固定残業代の定めを設けた上で、従業員に対してその内容を丁寧に説明する必要があります。

 

固定残業代制の有効要件

 固定残業代制を導入することについて、従業員との間で合意があったとしても、固定残業代制が無効と判断される場合もあります。この点、固定残業代制の有効性が問題となった裁判例は多数ありますが、裁判例の傾向を踏まえると、固定残業代制が有効になるためには、①通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分が明確に区分されていること(「明確区分性要件」)、②割増賃金として支払われた賃金が時間外労働の対価としての性質を有すること(「対価性要件」)、の2つの要件を満たす必要があると考えられます。

 ①の「明確区分性要件」については、割増賃金が特定の手当として支給されている場合(例えば、割増賃金が「残業手当」「固定残業手当」等の名目で、基本給とは別に支給されている場合)は、明確区分性が認められることになります。他方、基本給に組み込まれた割増賃金の額が明確でない場合(例えば、「基本給(30万円)に固定残業代が含まれる」という定めはあるが、30万円の内固定残業代がいくらか明らかではない場合)は、明確区分性を欠くことになります。

 ②の「対価性要件」については、手当の名称、算定方法(支払の条件)、その他諸般の事情を考慮して対価性の有無が判断されることになります。例えば、管理職であることの対価・職責に対する対価・仕事の成果に対する歩合給として支給されるものや、これらの性質と時間労働の対価としての性質が混在する場合は、対価性がないと判断されることになります。また、想定されている時間外労働時間数が著しく長い場合(例えば、基本給が極端に低額である一方、割増賃金として支給する手当が極端に高額であったりして、当該手当を設けた合理的な理由が認められない場合)は、割増賃金として支払われた賃金の中に割増賃金以外の要素が含まれているものとして、対価性がないと判断されることもあります。


まとめ

 以上のとおり、固定残業代制が有効になるためには、雇用契約書や就業規則に固定残業代制の定めを置くだけでは不十分であり、「明確区分性要件」や「対価性要件」などの要件を満たす形で制度を設ける必要がありますので、固定残業代制の導入を検討される場合は、事前に弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

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