時代とニーズにあった空間創出と連携・回遊性の向上を~大街道・銀天街の現状と今後の方向性②~
公開日:2026.06.12
INDEX
要旨
01
松山市民の大街道・銀天街への来街頻度は、「年に1~2回以下」が42.6%で最多、次いで「2~3ヵ月に1回程度」が17.0%だった。よく行く理由は「仕事や学校のついでに立ち寄れる」が53.2%で最も多く、行かない理由は「駐車場の料金がかかる」が52.5%で最多だった。市民の期待としては「魅力的な店舗や施設の誘致」が57.4%で最も多かった。
02
大街道・銀天街の店舗・施設の4分の3で外国人の来店が増加している(5年前との比較)。来店客割合は日本人が78.6%、外国人が21.4%で、特に飲食店では、外国人の割合が3割以上となっている。
03
大街道・銀天街を訪れているインバウンドの多くは韓国人が占めており、飲食や土産物系の食品(菓子・酒類など)をコンビニエンスストアやドラッグストア、ディスカウントストアなどで購入している。
04
大街道・銀天街が抱える課題は複雑で多面的である。中長期的な視点を持ちつつまちづくりを進める必要がある。市民やインバウンドなどの意見を踏まえ、時代と多様なニーズにあった空間創出が求められる。また、周辺との連携や回遊性の向上も重要である。
前回の振り返り
前回(26年1月号)で、2025年の大街道・銀天街の歩行者通行量は、2006年と比べて4割程度減少していることや、空き店舗が著しく増加していることなどについて紹介した。
こうした現状の中で、市民は大街道・銀天街をどう捉えているのか、さらには、近年増加しているインバウンド(外国人旅行者)の動向について店舗・インバウンドの双方にアンケートを実施し、課題や今後の方向性を展望する。
市民向けアンケート
松山市在住の個人に大街道・銀天街に関する意識や行動などを尋ねるインターネットアンケートを実施した。
01 約6割の人が「ほとんど行かない」
大街道・銀天街に行く頻度について尋ねたところ、全体では「年に1~2回以下」が42.6%で最も多かった。次いで「2~3ヵ月に1回程度」(17.0%)で「一度も行ったことがない」人も2.8%いた(図表−1)。性別では女性よりも男性、年代別では中高年層よりも若年層のほうが頻度は高かった。
単純比較はできないが、2015年に実施された「松山市民の消費行動に関するアンケート(まちづくり松山)」でも中心商店街1)への来街頻度は約6割が「2~3ヵ月に1回以下」だった。
1)ロープウェー街やまつちかタウンなどを含む
02 仕事や学校のついでに立ち寄る傾向
大街道・銀天街に「週に1回以上行く」人(全体の12.4%)」にその理由を尋ねたところ、「仕事や学校のついでに立ち寄れる」が53.2%で最も多かった。次いで「アーケードがあって歩きやすい」が37.1%、「買いたい物や受けたいサービスがある」が30.6%などとなった(図表−2)。
03 駐車場・駐輪場に不便さ
逆にあまり大街道・銀天街に行かない理由(「月に2~3回程度」以下の人、全体の87.6%)を尋ねたところ、「駐車場の料金がかかる」が52.5%で最も多く、次いで「駐車場・駐輪場が不便・とめにくい」が44.5%となるなど、駐車場・駐輪場の不便さを挙げる人が多かった(図表−3)。そのほか「他の店のほうが買い物しやすい」が36.1%、「買いたい物・受けたいサービスがない」が27.6%などとなった。
駐車場・駐輪場に関しては、「駐車料金が高い」意見が多いほか、「たくさんあるが停めにくい場所にあったり、一方通行の道にあったりして不便」(60歳代女性)「どこで買い物すればどの駐車場が割引になるのかわからない」(同)、「平面の無料駐輪場を増やしてほしい」(40歳代女性)などの意見もあった。
04 来街目的は買い物・飲食が約半数
大街道・銀天街に行く目的は、「買い物」が50.0%で最多、「飲食」が47.7%になった。「通り抜け」は30.2%、「散歩」は10.7%など、“通るだけ”の人もかなりいる(図表−4)。
自由意見では「『土曜夜市』には毎年行っている」(40歳代女性)、「たまに飲みに行く場所」(40歳代男性)、「歩いているが、“歩きたい”場所ではない」(60歳代女性)などの声があった。
05 飲食のための支出が中心
大街道・銀天街に行ったことのある人に支出額(業態別)を尋ねたところ、「飲食(飲酒無)」のために「1,000~1,999円」支出する人が29.2%で最も多かった。その他の品目・業態をみると、いずれも「支出しない」が半数以上を占めた(図表−5)。
06 空き店舗の増加への懸念
大街道・銀天街の空き店舗の増加を感じるかどうか尋ねたところ、「非常に感じる」が47.3%、「ある程度感じる」が34.8%となり、あわせて8割以上となった(図表−6)。また、空き店舗が増えることについて「街の活気がなくなる」が52.2%で最も多く、次いで「商店街の魅力が低下する」が32.4%となり、「特に気にならない」は8.6%となった(図表−7)。
「シャッター街になって寂しい」という見方が多いほか、「大街道は飲食店、銀天街は空き店舗」(60歳代男性)「行くたびに空き店舗が増えている印象」(50歳代女性)などの声が聞かれた。
07 インバウンドの増加には好意的
足元で顕著に増加している大街道・銀天街へのインバウンドの来訪については、「街に活気が出る」と答えた人が41.8%で最も多く、「松山の魅力を知ってもらえる」32.4%、「外国人向けのサービスや案内が必要である」26.2%など、おおむね好感を持っているようだ(図表−8)。
ただ、自由意見では、「県内一の中心街と思えないほど店舗が少ない。住民だけでなく、外国からの旅行者にとっても物足らないのではないか」(20歳代女性)と心配する声があった。
08 大街道・銀天街に対する期待
大街道・銀天街に対する期待を尋ねたところ、「魅力的な店舗や施設の誘致」が57.4%で最も多かった。次いで「駐車場・駐輪場や公共交通機関の利便性向上」が43.4%、「再開発によるまちの機能更新」「空き店舗の活用に対する支援」がそれぞれ30.0%などとなった(図表−9)。
スーパーや書店、映画館などの出店・復活を求める声が複数あったほか、「アパレルショップを増やしてほしい」(20歳代女性)、「活気を戻すには若者向けブランドの誘致」(40歳代女性)などの意見も相次いだ。また「他都市のような複合施設の整備」(50歳代男性)「子どもと楽しめるショッピングモール」(30歳代女性)などの意見もみられた。
店舗・施設向けアンケート
大街道・銀天街の店舗・施設などに対して、とくにインバウンドの来街動向についてヒアリングとWEBによる調査を実施した。
01 外国人来店客はおおむね増加
5年前と比較した来店客数の増減を尋ねた。その結果、「日本人」は全体で「変わらない」が65.1%で最も多く、「減った」は31.7%、「増えた」は3.2%だった(図表−10)。
一方、「外国人」の来店客数は、全体で「増えた」が74.6%で、「変わらない」は23.0%、「減った」は2.4%となった(図表−11)。ただ、ヒアリングではエリアを問わず「とりあえず入ってみる感じ」「来店客数は増えたが、購入する人はほとんどいない」などの声が多く聞かれた。
02 外国人の来店客はおよそ2割
日本人と外国人の来店客割合を尋ねたところ、全体では「日本人」が78.6%、「外国人」が21.4%となった(図表−12)。業態別にみると、「外国人」は「飲食(飲酒を伴う居酒屋など)」の32.5%と「飲食(ファストフード・カフェなど)」31.6%で3割を上回った。
ある居酒屋の店主は、「曜日によっては、外国人のほうが多い」と話すほか、ファストフード店員からは、「朝食時間帯に外国人客が増えた」といった声も聞かれた。
03 韓国人が約8割を占める
外国人の来店客割合を国別に尋ねたところ、全体では「韓国」が77.0%で最も多く、「その他」15.6%、「台湾」6.1%、「中国」1.3%の順となった(図表−13)。直行便の拡大に伴う韓国人の増加(IRC調査レポート26年4月号参照)もあって「韓国からの旅行者の来店が増えた」という声が多数聞かれた。中には「日本人も含めて来店客の半数以上は韓国人」(カフェ)、「韓国人にはカプセルトイやクレーンゲームなどが人気」(遊技場)という意見もあった。一方、「大型店やドラッグストアの買い物袋しか見ない」(複数店舗)や「価格帯やデザインなどが韓国人にはあわない」(アパレル)などの声があった。また、「最近、中国人が減った」(飲食店)という声も複数あって、松山−上海線の運休や外航クルーズ船の松山寄港の減少などが影響しているとみられる。
このほかに、「数は少ないが、欧米人は『和』を感じられる品物を購入する」(生活雑貨店)や「季節によって欧米系とアジア系で来店客の割合が異なる」(和菓子店)などの声もあった。
インバウンド向けアンケート
大街道・銀天街を訪れるインバウンド(外国人旅行者)の消費動向や意見を把握するため、下記の要領でWEBアンケートを実施した。
01 韓国人の訪問率が高い
大街道・銀天街を訪れたかどうか尋ねたところ、全体では「訪れた」が97.2%、「訪れていない」は2.8%だった。国別にみると韓国は「訪れた」が99.2%、「訪れていない」は0.8%、台湾・その他は「訪れた」が77.8%、「訪れていない」は22.2%だった(図表−14)。
自由意見では、「親切な人が多い」「通りがきれい」などのほか、「銀天街は空き店舗が多く、寂しい感じがした」(韓国人女性)「道後のほうが小さいけど楽しかった」(同)といった声があった。
02 9割以上がコンビニを利用
滞在中に利用した店舗(大街道・銀天街以外の商業施設等を含む)を尋ねたところ、全体では「コンビニエンスストア」が95.3%で最も多く、次いで「ディスカウントストア」79.6%、「ドラッグストア」60.6%などとなった(図表−15)。韓国は「ディスカウントストア」が81.8%で全体よりも2.2ポイント高かった。
実際、韓国人がディスカウントストアで土産用と思われる詰合せ菓子やインスタント麵などを大量に購入していた。関係者からは「大型ディスカウントストアは韓国人に人気があり、郊外店にも出向いているようだ」との声があった。また、ドラッグストアでは、女性は化粧品や日用品、男性は栄養ドリンクやサプリメントなどを「爆買い」する様子も見かけた。
03 飲食や土産物の消費が多い
大街道・銀天街での支出金額を尋ねたところ、「飲食(飲酒を伴うもの)」に「10,000円以上」支出した人が43.6%と最も多く、「飲食(飲酒を伴わないもの)」も「10,000円以上」支出した人が33.0%だった(図表−16)。
一方、「衣料品・ファッション雑貨」や「高級品」(宝石・呉服など)には、ほとんど支出していなかった。回答者によっては、大街道・銀天街以外の“滞在中の支出額”も含めて答えていることも考えられるが、前述した住民の消費動向(支出額)と比較して、インバウンドは「飲料・食料品」や「ビューティー・ヘルス」(理美容・エステ、化粧品など)」の支出が多いことがわかる。
課題と今後の方向性
01 複雑で多面的な課題を抱える
人口減少や消費行動の変化に伴い、大街道・銀天街では、商業機能の低下と空き店舗の増加が著しい。また、建物やアーケードの老朽化、再開発の遅れなども問題となっている。2027年度中には東温市に「コストコホールセール東温倉庫店(仮称)」の出店が決定しており、さらなる消費の郊外流出も懸念される。また、インバウンドの増加も「来てもらえるのはありがたいが、恩恵を受けている店は限られている」(商店街関係者)という声が聞かれた。大街道・銀天街が抱える課題は複雑・多面的で、解決は一筋縄ではいかないが、関係者による中長期的な視点でのまちづくりを進める必要がある。
02 時代とニーズにあった店舗・施設を
住民・インバウンドへのアンケートから“あったらいいと思う店舗・施設や機能”を記述してもらい、整理した(図表−17)。住民は、駐車場・駐輪場が最も多く、スーパーや映画館・劇場、ショッピングモール・複合施設なども多かった。
住民・インバウンドともに支出額は少ないものの衣料品・アパレルの需要は高く、とくに、ユニクロやGU、ZARAなどのファストファッション系を望む声が多い。また、子どもと一緒に入れたり、楽しめたりする施設、休憩や勉強ができるスペースなどの意見もあり、多様なニーズに応える店舗・施設による空間創出が求められている。
郊外店やネット通販などとの競争激化のなか、「もっと多くの人が集まる、集まりたいと思えるような場所であってほしい」(30歳代女性)「時代にあったブランド・店舗を誘致してほしい」(40歳代女性)といった声が代表するように、新たな求心力創造による活性化が喫緊の課題である。
03 周辺との連携・回遊性の向上
現在、JR松山駅の周辺や松山市駅前の広場整備が進められており、大街道・銀天街への人の流れを増やす起爆剤となることが期待されている。JR松山駅・松山市駅から銀天街、大街道へと主要拠点間をスムーズに移動できるよう、公共交通機関の利便性向上や自転車・歩行者道、駐輪場・休憩スペースなどの整備を進め、連携と回遊性の向上で人の流れを促す必要がある。もちろん、インバウンドで賑わうロープウェー街や道後など観光地の商店街との連携も不可欠である。
おわりに
今回の調査は市民の意識変化やインバウンドの消費実態を明らかにし、大街道・銀天街の活性化の重要な手がかりを示している。本レポートが大街道・銀天街の賑わい再生の一助となることを願う。
一覧へ戻る