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各種調査レポート

地域活性化策として期待される二地域居住

地銀9行連携レポート

地域活性化策として期待される二地域居住

公開日:2026.05.11

一般財団法人静岡経済研究所 研究員 清 亮介

全国の地方銀行9行による「地域再生・活性化ネットワーク」の共同企画として、各地の地域活性化に向けた取り組みをご紹介するコーナー。
今回は、地域活性化策として期待される静岡県の二地域居住について紹介します。

 近年、二地域居住への関心が高まっている。二地域居住とは、主な生活拠点と別に特定の地域に生活拠点を設け、一時的ではなく一定期間を過ごす暮らし方を指す。新型コロナウイルス感染症の拡大でテレワークが急速に浸透したことを受けて、以前より場所の制約を受けずに就労・生活できる環境が整い始めた。国も、2024年5月に「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」(広活法)を改正し、法律で初めて二地域居住を定義づけ、地域の実情に精通した市町村が「特定居住促進計画」を作成できるようになった。
 二地域居住者を受け入れる地域にとっては、生活必需品の購入や住宅リフォーム、外食などに伴う経済効果が期待できるほか、地域の担い手確保や、空き家・耕作放棄地の利活用、新事業や雇用を生み出す効果もある。人々の関心の高まりに加え、社会的な要請を受けた行政の支援体制の整備が追い風となり、今後、二地域居住は社会により広く浸透していくことが予想される。以下では、二地域居住に取り組む静岡県内の事例を、ポイントとなる3つ(住まい、就労、コミュニティ)の観点から紹介したい。

首都圏に近い好立地を生かしビジネスパーソン中心に誘引

 三島市・長泉町エリアは、両市町合わせて人口約15万人を擁する。豊かな自然に恵まれ、富士山を望める環境の良さに加えて、三島駅を起点に都心から新幹線で1時間圏内という交通至便な点もあいまって、以前から首都圏の就業者から移住先として人気があり、二地域居住先としても注目されている。現在、三島市と長泉町から特定居住支援法人に指定された(同)うさぎ企画が中心となり、特定居住促進計画策定に向けて特定居住促進協議会を立ち上げるなど、二地域居住促進の取組みが進んでいる。具体的には、経済産業省「地域の人事部」事業で複業人材と地域企業とのマッチングに取り組み、2025年9月には二地域居住を含めた案内窓口を三島市内に開設した。さらに同社は、交通課題への取組みとして、オンデマンド交通「SPICE BOX」を試験的に運行。長泉駅や三島駅を含む約4km圏内を対象に、利用者がスマホで配車を依頼し、相乗りする仕組みを導入し、車を保有しない二地域居住者にとって利便性の高い移動手段として期待されている。

 このほか、㈱シタテが運営する短期滞在用のゲストハウス「giwa」や、コワーキングと中長期滞在用の複合施設「三島クロケット」も、ワーケーションの利用者や三島市への移住希望者を取り込み、二地域居住者を誘引する重要な拠点となっている。

学生プロジェクトによる拠点整備で若年層を呼び込む

 東伊豆町は、伊豆半島の東海岸に位置する人口1.1万人の町である。目前に海が迫る風光明媚な地であるが、少子高齢化や若年層の流出で人口減少が進んでおり、町では以前から、外部からの人流の創出に取り組んできた。そうした中、芝浦工業大学の学生だった荒武優希氏が2014年に同町で空き家改修のプロジェクト(以下、PJ)を実施。同町も積極的に支援したことで、現在は、さまざまな施設やサービスが整備され、若年層が流入する動きが生まれている。

 住まいについては、(同)so-an(東伊豆町)が、空き家を改修して宿泊施設としてオープン。4棟すべてがキッチンを備えた滞在型で、二地域居住者のお試し居住としても利用されている。同社が運営する施設「EAST DOCK」も、インターネット環境が整備されており、ピーク時には、首都圏の20代の若者を中心に8人が拠点として利用した実績がある。同じようにPJで改修したキッチンスペース「ダイロクキッチン」は、カフェや料理教室のほか、移住関連セミナーなどが開催されるなど、来訪者と地元の人との交流拠点となっている。

 東伊豆町では、荒武氏を中心としたメンバーが関係人口となり、二地域居住者や移住者へ移行し、現在も施設運営などを通じてまちづくりを推進している。彼らが主催するワーケーションイベントに参加した20代の若者が、荒武氏たちの取組みに賛同し、同町の地域おこし協力隊になるなど、若手を中心に広がりを見せる。

シェアオフィス「EAST DOCK」

経営者層に注目 集積する市内企業との連携も

 焼津市は、静岡市に隣接して東名高速道路のICが立地するなど交通至便で、3つの港を有する全国屈指の水産業の町である。市では、ふるさと納税者との交流や関係人口の創出に注力しており、二地域居住を進める上で、ビジネスとの親和性に着目している。2025年に国土交通省の二地域居住先導的プロジェクト実装事業に採択され、二地域居住を支える体制づくりや生活環境の整備についてコンソーシアムを立ち上げ、二地域居住を推進している。推進メンバーの1人である㈱吉村(東京都品川区)の橋本隆生代表取締役社長は、二地域居住をビジネスにつなげようと、市の2025年度の二地域居住促進事業の一環として、在京の企業経営者が参加し、焼津の経営者と交流するスタディツアーを開催するなど、企業関係者を中心とした人流の創出に取り組んでいる。

 その重要な拠点となっているのが、カフェやホテル、オフィス機能などを備えた複合施設「焼津PORTERS」である。住まい機能として6室の宿泊機能を整備しており、県外企業の従業員が定期的に利用している。就労面では、最大40名を収容できるフリースペースや3部屋の会議室などを備え、24時間使用できる快適な会員制のワークスペースを整備している。


焼津PORTERS

官民両輪による二地域居住の環境整備を

 今後、二地域居住を進める上では、特定居住促進計画の作成や特定居住支援法人の指定など、改正広活法の枠組みを活用したい。加えて、住まい・就労・コミュニティ機能の3要素を念頭に、民間主導による柔軟な拠点づくりと、行政による支援制度整備の両輪で取り組めば、二地域居住の持続的な拡大が期待されよう。

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