金利のある世界
公開日:2026.04.24
最近、金利のある世界という言葉をよく耳にする。
昨年末に、日本銀行の政策金利が0.75%へと引き上げられ、1995年9月以来、超えたことのなかった0.5%の壁を30年ぶりに乗り越えた(この原稿がみなさんのお手元に届く頃には、1%に到達しているかもしれない)。10年物長期国債の利回りは、2%台半ばとなっている。企業の事業資金の借入れ金利や家計の住宅ローン金利なども上昇している。
借りる方の立場からみると、もちろん金利は低い方がよい。しかし、金利のある世界は、前向きな経済活動が動き出していることの裏返しでもある。金利は物価とともに経済の体温計と言われる。経済の活動が活発になっていくと、金利や物価は自然と上昇していく。
金利が長期にわたってゼロであった世界は、恒常的な低体温症の状態にあった。金利のない世界は、単に金利がゼロであったというだけではない。低インフレと低成長も共存する、凍りついた経済であった。金利がずっとゼロの世界は、金利が低くても、前向きな経済活動のためにお金を借りるインセンティブが欠如していた。
30年という長い月日を要したが、日本経済はようやく新たな局面の入り口に辿り着いた。金利のある世界への回帰は、物価上昇率、賃金上昇率、そ して金利がプラス推移する経済への転換を意味する。直面するコスト増の圧力は、日本経済が着実に前向きな勢いを強めていることでもある。この変化を乗り越える利益を生み出していくプロセスは、不確実性への挑戦であると同時に、創意工夫とその評価が問われる。
金利のある世界では、再び、凍りついた金利のない世界に立ち戻らないよう、力強い経済を取り戻すことが急務である。この過程では、民間主導での生産性向上・経済成長を実現させていく必要がある。その意味で、低利だからと漫然と資金を手元に置いておくのではなく、金利というコストを支払ってでも、それを上回る利益を生む事業へ資金を投じることができるかが問われる時代になる。
そして同時に、分配面から経済主体の前向きな行動を支えていくメカニズムを定着させていくこともポイントになる。パイを大きくすると同時に、その分け方を、労働者への配分を厚くし、将来にわたる着実な所得拡大を実感できるようにしていくことが期待される。分配は、単なる利益の流出ではなく、将来への投資であると考える視点も大切にしていきたい。一人ひとりの労働者が将来の所得拡大を確信できる環境を整えることは、地域経済の活力を高め、巡り巡って企業自身の成長を支えていくことにつながっていくはずである。
企業の成長力を高めていく前向きな取り組みこそが、持続的な経済成長を支える確かな原動力となっていくのではないだろうか。
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