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プロメテウスの火を制御せよ

視点

プロメテウスの火を制御せよ

公開日:2026.04.02

株式会社いよぎん地域経済研究センター(IRC) 代表取締役社長 矢野 一成

  日本経済研究センターの長期経済予測によれば、2075年に全産業の国内生産額が一割増加する見通しだ。人口減少による衰退が懸念されるなか、働き方改革や外国人労働者の受け入れなど様々な要素が必要だが、最も成長を牽引するのはAIおよびデジタル関連と予想されている。AIの動向が新聞紙上を連日賑わしているのも無理はない。

 さて、これから生成AIの業務活用を考える方も多いと思われるが、「機密性」と「完全性」のリスクをご存知だろうか。入力データや生成物が著作権・商標権などの権利侵害に該当しないか、虚偽の内容を含まないか、厳重な注意が必要である。また生成AIの学習機能により、入力情報が精度改善に利用され、第三者からの質問を通じて個人情報や機密情報が流出するリスクも内在する。したがって、業務利用においてはセキュアな環境の構築が必須であり、従業員の私的利用にも一定の制限をかけるべきであろう。

 弊社でもルール策定とセキュアな環境構築を踏まえ生成AIを試しているところだ。例えば、経営コンサルティング業務では、法令変更時の条文精査等に生成AIを活用し、瞬時に差分を分類することで、従来時間と手間をかけていた作業を効率化した。浮いた時間を新たな案件に回し、より多くのお客様の要望に応えることで、売上増加に寄与している。

 IRC Monthlyのレポート作成では、構想段階の壁打ち相手として、構成や小見出しの相談相手として、時には外国人向けアンケートの翻訳者として、さらには最終の校正者として、今や生成AI抜きでは業務が回らないほどの存在感である。リードタイムが大幅に短縮されたのは言うまでもない。このチームでは、人員が減少したにも関わらず、以前を上回るペースでレポートを産み出して続けている。

 セミナー業務も例外ではない。講師ごとに仕様の異なるチラシを内製していたが、生成AIの活用とホームページの専用サイト構築により、一年分の作業が一カ月で終了した。セミナー50回分のタスクが業務プロセスから消えるインパクトは大きく、この部署では一人当たり月10時間前後の時間外勤務がほぼゼロになった。リソースを営業やプロモーションに振り向けており、メンバーの士気も大いに上がっている。

 その昔、火を手にした人類は、その炎に畏怖と希望を同時に抱いたとされる。AIという新たな「火」もまた制御を誤れば炎上する可能性があり、適切に扱えば暗闇を照らす灯火となるかもしれない。生成AIは機密性と完全性のリスクを内包しながらも、業務効率化と創造性の拡張という恩恵をもたらす。重要なのは、盲目的な依存でも過度な警戒でもなく、セキュアな環境とルール化を前提に、我々の判断力と創造性を補完する「協働者」としての位置付けではないだろうか。

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