【法務編】
労働組合と団体交渉
公開日:2026.02.27
Q. 従業員が加入した労働組合から、団体交渉の申入れがありました。団体交渉に応じないといけないのでしょうか。
A. 団体交渉の申入れがあった場合、会社は団交応諾義務と誠実交渉義務を負い、これに違反すると不当労働行為として違法になる場合があります。労働組合の言いなりになる必要はありませんが、誠実に対応しましょう。
INDEX
合同労働組合(ユニオン)
日本の労働組合の多くは正社員を中心とした企業別労働組合であり、会社と激しく対立することは稀で、労使協調体制を取って、全体の待遇や賃金などについて協議するのが一般的です。
これに対して、合同労働組合(以下「合同労組」という)とは、勤務する会社を問わずに労働者1人から加入することができる労働組合で、近年、増加しています。会社に対して不満を持つ労働者が合同労組の力を借りて会社と交渉することを目的に加入することが多いので、合同労組との交渉では未払賃金や待遇改善など従業員の個人的要求が交渉事項になるとともに、会社に対して非協調的な傾向があります。
団体交渉の申入れを受けた会社の義務
(1)団交応諾義務
労働組合法第7条2号は、会社が雇用する労働者の代表者との団体交渉を「正当な理由がなくて拒むこと」を不当労働行為として禁止しています。つまり、会社は労働組合から団体交渉の申入れがあった場合、原則としてこれに応じて交渉のテーブルにつく義務(団交応諾義務)があります。この義務は、相手がたとえ少数組合であっても、あるいは近年増加している社外の合同労組(ユニオン)であっても同様に適用されます。
ただし、会社が団体交渉に応じる義務があるのは、「義務的団交事項」と呼ばれる範囲に限られます。具体的には、賃金、労働時間、解雇、人事、懲戒といった組合員の労働条件や待遇に関する事項、および労使関係の運営に関する事項で、会社が決定できるものが該当します。純粋な経営専権事項であっても、それが労働者の労働条件に影響を及ぼす範囲においては、団体交渉の対象となり得ます。
(2)誠実交渉義務
会社には、交渉の席で「誠実に交渉する義務(誠実交渉義務)」があると解されています。これは、労使間の合意形成を目指して真摯な態度で交渉に臨む義務であり、この義務に違反した場合は、たとえ形式的に交渉に応じていても、実質的な団交拒否として不当労働行為が成立する可能性があります。
例えば、会社は、労働組合の要求や主張に対し、自社の主張の根拠を具体的に説明し、必要に応じて裏付けとなる資料を提示する努力をすべきとされています。特に、組合の要求を拒否する場合には、なぜ応じられないのか、その論拠を十分に説明する義務があります。理由も示さずにゼロ回答を繰り返すような態度は、不誠実な交渉とみなされ、不当労働行為となるリスクを高めます。
また、団体交渉は、代表者を通じた取引・ルール形成の手続きです。したがって、会社側の交渉担当者には、一定の裁量や決定権限(実質的な交渉権限)が付与されていることが望ましいとされます。権限のない担当者が出席して「持ち帰って検討します」と繰り返すだけでは、交渉が実質的に進まず、不誠実な対応と評価される可能性があります。
ただし、誠実交渉義務は、あくまで合意に向けて努力するプロセス上の義務です。労働組合の要求をすべて受け入れたり、必ず譲歩したりする義務まで負うものではありません。労使双方の主張が対立し、誠実に交渉を尽くしても合意の達成が見込めない場合には、会社側から交渉を打ち切ることも正当と判断されることがあります。
団体交渉の申入れに対する具体的な対応
(1)弁護士への相談・依頼
不慣れな社長が準備不足のまま交渉に臨むと、よく分からないままに押し込まれて組合の要求を呑んでしまうことが起こり得ます。
費用はかかりますが、弁護士に団体交渉への同席・対応を依頼するのがお勧めです。
(2)団体交渉の日程・場所の設定
組合からは、団体交渉の申入時、タイトな日程と開催場所(会社事務所等)を指定する傾向がありますが、一方的な指定に従う必要はありません。指定日時・場所での開催には対応できない旨を連絡のうえ、会社側から対案を提案します。
会社事務所等で開催すると時間無制限の交渉になりかねないため、公共の貸会議室を利用することがお勧めです。
(3)要求事項の確認と検討
団体交渉の申入書だけでは、具体的な要望が分からないことが多いです。組合側に具体的な要望事項を事前に提示するよう依頼し、団体交渉前に要望事項への対応を検討、会社としておおよその方針や担当者の裁量範囲を決めておきます。
(4)関連事項の確認
団体交渉では、要望書に記載がない事項、例えば、就業規則や労働者との雇用契約の不備等を指摘されることがあります。
団体交渉前に就業規則や雇用契約を一通り確認しておくことが無難です。
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