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各種調査レポート

IRC幹部社員セミナー(第9期)研修旅行

紀行

IRC幹部社員セミナー(第9期)研修旅行

公開日:2025.12.22

渡邊 晶子

日 程 2025年9月24~25日
訪問先 中村ブレイス株式会社(島根県大田市)
    島根電工株式会社(島根県松江市)
    株式会社八天堂(広島県三原市)

はじめに

 9月24日~25日、幹部社員セミナー第9期研修旅行を実施した。参加者は、セミナー生22名とIRC事務局3名の計25名である。
 今回は「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞されている、中国地方2県3社を視察した。経済や社会環境が激変するなかで、いずれも経営理念を明確に掲げ、社員や顧客、地域のために、時代に合わせた新しい経営の取り組みを実践されている企業である。

中村ブレイス株式会社

 最初に訪れたのは、世界文化遺産・石見銀山の麓にある島根県大田市大森町。情緒漂う歴史的町並み保存地区の入口に本社を構える、中村ブレイス株式会社だ。
 同社は、先代の中村俊郎氏(現会長)が、京都やアメリカでの修行を経て、「ゴーストタウン化した町を復活させたい」「世界中の人に喜ばれるものづくりがしたい」という夢をもって故郷で創業。現在、人口400人の大森町で、約80名の社員が医療機関や個人客からのオーダーメイドや既製の義肢装具づくりに携わっている。高い技術力と、1人ひとり異なる体の形状や要望に合わせた柔軟な対応力が評価され、国内のみならず、海外からも30カ国以上の注文実績がある。
 まず中村宣郎社長から、銀山と町の歴史に始まり、大きな転機となったシリコーンゴム素材の発見や、アスリートや海外の少年少女へのサポートを通した交流エピソードなどを交えて、同社の歩みやものづくりにかける強い思いをうかがった。実際に、手指や目、鼻、耳、乳房などのサンプルを間近で見てみると、爪や血管、毛の細部までがリアルに再現されており、そのクオリティの高さには、一同驚くばかりであった。
 また、50年の間に65軒もの修復を手がけてきた古民家再生の取り組みでは、それをきっかけとしてU・Iターンした若い世代の転入が増えている現状を知り、かつて深刻な過疎化に悩んでいた地域が「人が帰り、集う町」として活気を取り戻しつつある様子が窺えた。
 続いて、工場の様子を見学させていただいた後は、同社が改修した「オペラハウス大森座」や「まちをたのしくするライブラリー」などをご案内いただき、風情ある町並みを散策して楽しんだ。
 同社では、「人にやさしいものづくり」を実現するため、日々技術の向上を追求しながら、工場のあちこちに掲げられている会長直筆の社是「Think」のもとで、全社員が常に考え、お客様に寄り添う姿勢が大切にされている。また、ものだけではなく、精神的なサポートを通して誰かの支え(ブレイス)になっていることが、仕事のやりがいとなり、企業と地域がともに生きる未来につながっている。

参加者の声(中村ブレイス株式会社)

藤田産業株式会社 足立 充弘
単に製品をつくるだけでなく、暮らしや文化を守りながら、地域とともに発展している企業だと分かった。自社の今後の経営や地域貢献を考えるうえで、多くのヒントと刺激を受けた。
株式会社秦商事 市瀬 一規
社員全員が同じベクトルで思いや考えを持っている。社長が代替わりされてもそれが引き継がれ、全員で取り組んでいると感じた。
株式会社悠遊社 茎田 真子
自社の介護事業でも、役員と現場の職員が一緒に、地域や利用者の方1人ひとりを寄り添う心を大事にしていきたいと思った。
マルトモ株式会社 白石 早紀
先代の思いを引き継ぎ、町づくりにここまでの情熱を傾けられることが純粋にすごい。事業内容と地域貢献の活動が「再生・循環」というキーワードでつながっていて、CSRの考え方そのものだった。
南商事株式会社 行定 千尋
当時は医療用に使用されていなかったシリコーンゴム素材で開発された経緯から、どんなことでも自分の仕事に結びつけられないか、常にアンテナを張って物事を見なければならないと思った。
日東河川工業株式会社 横井 博文 
役割ごとにチームで作業をしている職場全体の雰囲気が良く、限られたスペースでも整理整頓がしっかりされていた。自社でも周知したい。

島根電工株式会社

  翌日は、山陰・広島エリアを拠点に電気・水道などの設備工事を手がける、松江市の島根電工株式会社を訪問した。2つの湖(宍道湖・中海)と中国山地に囲まれ、国宝・松江城を望む絶好のロケーションに本社を構える同社は、来年で創業70周年を迎える。
 以前は、公共工事を中心とした大口工事を主力としていたが、受注減少を見越して、民間や一般家庭の小口工事重視の方針に転換。住まいの“ちょっとしたお困りごと”を提案・解決する地域の心強い味方として、『住まいのおたすけ隊』のサービスが誕生した。さらに12年前に、そのノウハウがパッケージ化されて業界初のフランチャイズ事業がスタート。現在は、全国35社に展開されている。
 野津廣一社長から、同社の新スローガン「あたりまえの毎日をつくる」に込められた思いや、加盟企業とのネットワークを活用した「共創型フランチャイズ」という新たな試みのほか、「五方良し経営」の考え方をもとにした特徴的な取り組みなどについてお話をうかがった。
 同社では、創業者の思いを引き継ぎ、人財育成を重視。特に、入社3年目までの社員の教育プログラムには力を入れている。また、「現場のことを現場で覚えなくていい」ように、体験して学べるトレーニングセンターが来年完成予定で、人手不足が深刻化するなか、育成体制はますます充実されている。
 また、全国トップレベルの技術を継承するために独自の技能コンクールが実施されていたり、社員と社員の家族を大切にする経営の取り組みとして、入社3年未満かつ独身社員の家族だけが参加できる家族懇談会や家族ぐるみの運動会が長年継続されている。
 最後のメッセージでは、さまざまなしくみや制度、システムがあっても、その下に会社の風土や文化がなければうまく機能しないことや、会社の方針は社長の言葉で語られても、組織の文化は社員全員でつくられるものだということが伝えられ、経営に関わるセミナー生にとっては、大きなヒントとなっていた。

参加者の声(島根電工株式会社)

伯方塩業株式会社 宇都宮 和博 

社員の皆さんが誇りをもって働かれている姿が魅力的で、企業文化が日々の業務の中に根づいている様子が伝わってきた。
共同瓦斯株式会社 篠原 雅 

従業員ファーストの企業風土は、想像以上だった。社員教育や技術力向上への投資を惜しまない方針に感銘を受け、自社でも取り入れられることは実践してみたいと思った。
日東河川工業株式会社 髙橋 樹生 

社員の方にご準備いただいた、社名入りの歓迎状に感動した。働く環境の良さも社員の意識や行動につながっていると感じた。
愛媛トヨペット株式会社 對馬 繁幸
風土や文化を変えることからスタートするために、まずは、自分自身が社長の強い思いが込められたメッセージを伝える人にならなければならないという自覚をもった。

 株式会社伊勢屋商店 二宮 弘憲
社屋が非常に綺麗で、会議室や事務所が整理されていた。多くの社内行事が盛り上がっているのは、企業風土や文化が良いからだと思う。
株式会社モリ鋼機 松岡 貞重
計画的な教育が個人のスキルアップや仕事のやりがいにつながっており、人間関係も構築されている。福利厚生では、社員を大切にされていることが非常に感じられた。
エヒメセラム株式会社 山本 敬文
社員一人ひとりを家族のように思われているところに愛を感じた。先輩から後輩への技術研修会は、自社でも取り組みたい。

株式会社八天堂

 最後の視察先は、広島県三原市で創業して92年、冷やして食べる「くりーむパン」で知られる株式会社八天堂である。広島空港の側にある「八天堂ビレッジ」は、隣接する製造工場のほか、パン作りができる工房やショップが一体となった「八天堂カフェリエ」、カフェ、地元産品を販売する空の駅、バーベキュー設備など、家族や友人と楽しめる体験型のテーマパークとして親しまれている。また、敷地内には、同社スタッフや地域の方に利用されている事業所内保育園も併設されている。
 甘く優しい香りが漂うエリアで、森光孝雅社長に、『人生、今日がはじまり 良い品 良い人 良い会社づくりへの挑戦』と題してお話をいただいた。
 和菓子屋から始まった同社が、業態を変更しながら成長してきたこれまでの歩みや、3代目として家業を継いでから今日に至るまでのご苦労のほか、スタッフ全員でピンチを乗り越えたからこそある今日について、経営者に必要な考え方や志(経営理念)・情熱を、人生観を交えた多くの言葉で伝えてくださった。なかでも、夢を追うあまりに突然大切な社員を失うことになった辛い経験や、“どん底”の中で支えてくれた家族やスタッフへの感謝の思いと愛情の大きさがうかがえるお話には、一同心を打たれていた。
 セミナー生は、幹部社員には経営者の強い思いを川上から川下、未来に向かって送り込んでいく使命があること、消費者だけでなく、地域や未来のための貢献が必要であることなどについて、自身の過去の経験を振り返りながら、あらためて深く考えさせられる機会となっていた。

参加者の声(株式会社八天堂)

佐川印刷株式会社 浦部 千恵
「選択と集中」「生むために捨てる」ことは、弊社にも必要な考え方である。やり続けることもそうだが、やりきることは、事業戦略を次に進めるためにも必要なことだと思った。
四国溶材株式会社 岡村 伸博
経営者は、折れない心と強い信念、志を持つことが大事で、仕事は人生をかけてやるものだと学んだ。社員や仕事に対する考え方が変化して、感謝の気持ちをもつようになったお話が参考になった。
株式会社濱﨑組 楠島 忠
包み隠さずに熱くお話しいただく社長は、大変魅力的だった。逆境に立たされても、逆にチャンスととらえ、新しいことにチャレンジする力を見習っていきたい。
株式会社秦商事 高橋 啓司
幾度の挫折を繰り返して成功された体験談から、部下の退社や売り上げ不振など、私も同じ経験があったことが思い出され共感した。
四国通建株式会社 土岐 正太郎
リーダーにとって逆境というのはチャンスであり、厳しいときこそ人間としての真価が問われることを教えていただいた。
愛媛トヨペット株式会社 吉田 幸平
「人生、今日がはじまり」という言葉が、自身の意識改革につながった。与えられた環境で、一緒に働く人を大切にできる幹部社員を目指したい。

参加者の声(視察全般)

四国溶材株式会社 水谷 友裕
3社とも「人の大切さ」を強調されていた。社長と幹部と社員で方向を合わせることや、リーダーシップとフォロワーシップが必要だと感じた。
株式会社アイムービック 森本 美智子
五方良しを目指す姿勢こそが、企業を一時的な成功ではなく、持続的な成長へと導く原動力であることを痛感した。あらためて自社の経営理念を振り返り、社内で共有を行なった。
株式会社神開発 吉田 英弘
どの企業も初めからうまくいっていたわけではなく、苦しい状況から立ち上がっていた。どんな状況でも前を向いて改善しながら進めるよう、前向きになれる言葉や環境をつくり、責任をもって自社の社員と共有していきたい。

おわりに

 2日間の視察を通して、他地域の異業種企業から多くの気づきや学びを得るとともに、メンバー同士がより絆を深める有意義な機会となりました。初めての島根訪問と6年ぶりの広島再訪により、素晴らしい企業の皆さまとのご縁がつながったことを嬉しく思います。
 私どもを温かく受け入れてくださった3社の皆さまに、あらためて感謝いたします。有難うございました。 

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