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金は輝き続けるか?

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金は輝き続けるか?

公開日:2025.12.26

菅 正也

はじめに

2025年12月、金の国際価格はロンドン現物価格、ニューヨーク先物価格ともに史上最高値を記録した。日本での小売価格も12月24日、初めて1グラムあたり2万5千円台を付けた。日々、金価格変動のニュースが気になる読者も多いことだろう。また、最近になって金に興味を持ち始めた方がいらっしゃるかもしれない。

そこで今回は、金が人々を魅了する背景を振り返るとともに、価格上昇の要因と消費者動向の変化についてまとめた。

「権威」の象徴から「信頼」の象徴へ

金と人類の関係は、紀元前6000年頃のメソポタミア文明まで遡る。初めは神々や王の「権威」の象徴だった金だが、古代ギリシャ・ローマ時代に国家がその価値を保証する「貨幣」へとその役割を大きく変え、交易の発展を支えた。さらに近代に入ると「金本位制」が導入され、国際的な貨幣の価値を金で裏付ける仕組みが確立されたことで、金は国際経済を支える「信頼」の象徴となった。「金本位制」は、1971年のニクソン・ショックによって終了したため、現在の金に通貨を代替する機能はないが、数千年にわたり価値を失ったことはなく、人々からの信頼は変わらない。

人々を惹きつける魅力

高い資産性と不変の価値

金は、存在そのものが価値を持つ実物資産であり、腐食したり錆びたりしない不変性を有する。そのため、ニクソン・ショックを機に金とドルの兌換が停止され、金価格が固定相場制から変動相場制へと移行した後も、第四次中東戦争や9.11世界同時多発テロ、リーマンショックなど社会経済が混乱する都度、安全資産として注目されてきた。

限りある埋蔵量

また、人工的に作り出すことの難しさから希少性も高い。国際機関のワールド・ゴールド・カウンシル(以下「WGC」)によると、2024年第2四半期までに人類が発掘した金の総量は約20.9万トンで、オリンピック公式競技用プールに換算して約3.8杯分に相当する。一方、経済的に採掘可能な総量は約5.9万トンといわれており、プール1杯分程度しか残存していないことが資産価値をさらに高めている。

価格変動の背景

金の国際価格は2024年末から上昇傾向が強まり、2025年10月に当時の最高値に達した後、変動を繰り返しながら12月現在、年初比で約50%上昇している(図表-1)。こうした価格変動の要因について、需給両面から最近の動向を整理する。

需要面

1.将来不安による安全資産への逃避

WGCによると、2025年第3四半期の世界の金需要は前年同期比3%増加の1,313トンとなり、四半期ベースで過去最高を記録した(図表-2)。

需要を押し上げている要因の1つは、米トランプ政権の誕生だろう。相互関税や政府閉鎖など政策的な不透明感や、米連邦準備理事会が金利引き下げ局面に入ったことなどを背景にドル離れ傾向が強まっており、安全資産として金への需要が高まっている。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、中東情勢や関税政策による米中貿易摩擦の再燃など、地政学的な不確実性の高まりも世界的な金需要を加速させている。

用途別にみると、直近では上場投資信託(ETF)を中心にファンドを通じた投資需要(図表-2赤線)の伸びが顕著だ。投資資金の流入拡大は、2025年のような価格上昇を加速させる反面、一時的な急落の引き金となる可能性もあり、今後も相場変動を左右する大きな要因になると考えられる。

2.存在感を増す中央銀行

安全資産への逃避行動は政府機関にもみられる。各国中央銀行等の外貨準備額に占める金保有割合の推移をみると、トランプ氏が大統領選に勝利した2024年第4四半期以降、上昇傾向が強まり、直近では約3割にまで拡大している(図表-3)。

また、保有量全体に占める国別の割合では、先進諸国が低下傾向にあるなか、2010年代以降、中国とロシアが保有量を拡大させており、両国の存在感が大きくなりつつある点は注目される(図表-4)。

供給面

1.産出量の頭打ち

総供給の約7割を占める鉱山産出量は、年間3,600トン程度が続いている。鉱山会社は数十年に亘る計画に基づいて採掘することが多く、供給は安定している一方で、鉱山開発には多大なコストと長い年月がかかるため大幅な増産は難しい。また、約3割を占めるリサイクルは、相場上昇に伴う様子見から今のところ動きは鈍い。ただ、電子機器等の金使用量が増えるにつれて廃棄品に含まれる金はいわゆる「都市鉱山」として注目されており、今後の再利用拡大が期待される(図表-5)。

2.産出国における環境意識やコストの高まり

現在、世界最大の金産出国は中国である。WGCの2024年統計によると、中国の年間金産出量は約380トンに上り鉱山産出量全体の約1割を占める(図表-6)。

中国では、政府の強力な後押しと金に対する旺盛な消費意欲を背景に生産を拡大し、2007年にはそれまでトップだった南アフリカを抜いた(図表-7)。近年は環境保護意識の高まりによる採掘規制の強化から横ばい傾向が続くが、最大産出国としての地位は維持している。

一方、長らくトップだった南アフリカは、長年の採掘により浅い鉱脈が枯渇し、よりコストが掛かる深い場所での採掘が必要なため生産量が減少し、かつての地位からは遠ざかっている。


今後は、主要産出国が先端技術等の導入によって環境負荷の低減と生産性の向上を図りながら、将来の採掘可能量をどの程度増やせるかかが安定供給のカギとなるだろう。

消費者動向にみる変化と留意点

2025年初来の価格上昇を受けて、金を巡る消費者動向に変化はあるのだろうか。購入の際の留意点と併せて、県内の事業者に聞いてみた。

業界動向

2025年9月から10月にかけて、全国的に金への注目度が一気に高まった影響で、国内では特に小型(5g、10g、20g、50g)の地金生産が追い付かず、10月初めに販売を一時停止するよう通知があった。こうした販売規制は初めてとのことだったが、11月末には一定の制限の下で再開されている。

消費者動向

県内でも、国際価格が急上昇し始めた9月頃から問い合わせが増え、10月初めにかけて10g、20g、 50gの地金を買い求める人が増えたという。購入経験者と初購入者との比率は半々くらいだが、初購入者の中に若年層が多い点はこれまでと大きく違うとのことで、関心の広がりが感じられる。また、シニア層は数名での来店を多く見掛けるようだが、若年層は意外と1人での来店が多いそうだ。

一方の売却については、10月下旬に1日の下落幅として過去最大を記録した一時期に売却希望が増えた。その後、再び上昇局面に入ったため様子見姿勢が強く、今のところ売り急ぐような動きは見られないとのことである。

留意点

金の購入に際しては、一般的な株式や債券との違いを理解しておくことが必要だ。


1.「投資」ではなく「資産分散」の姿勢

例えば、金は不変の価値を有する一方で、株や債券などと違って保有しているだけでは配当や利子が発生しない。金利低下局面では金の強みとなる反面、株などのリスク資産が好調な時には同じような収益が期待できるとは限らない。県内事業者によると、最近の株高による売却益の全てを金に振り向けようとする人もいるようだが、「短期的な収益を狙う投資目線ではなく、資産ポートフォリオの分散を目的とした姿勢が望ましい」とのことである。また、国際価格は米ドル建てのため、価格と為替の両方の相場変動の影響を受ける点にも注意が必要だ。


2.正確な取り扱いと現物保管リスクへの対応

取引面においては、購入方法や引き出し方法によって手数料が発生する場合があること、また売却益が発生した場合には利益額や保有期間によって課税率が異なるなど、正確な取り扱いが求められる。さらに、金現物を保有する際には防犯面への対応も不可欠である。


金に興味を持ったなら、まずはこうした金特有の留意点を理解することから始めてみよう。

おわりに

世界が不確実性を増すにつれて、金が持つ魅力はさまざまな思惑を惹きつける。そのため、金の価格は短期的には大きく変動する可能性がある。また、需給両面で中国とロシアの存在感が高まっており、今後の対米関係や世界情勢の変化による両国の動向も注目される。一方で、不変の価値を有する金には、万が一の時に「持っていて良かった」と思える高い資産性があることも確かな事実である。一瞬の輝きに惑わされることなく、長期的かつ冷静な判断を持つことが金の魅力を最大限に輝かせる秘訣だろう。

【コラム】大盛況だった「大黄金展」

去る2025年11月19日から24日まで、松山市のいよてつ髙島屋(以下「同社」)では恒例の「大黄金展」が開催された。本イベントは、金製品販売の「株式会社SGC」が主催する展示即売会で、同社での開催は13年連続13回目となる。

同社担当者によると、2024年の同時期に比べて金の小売価格が約1万円値上がりした影響で例年以上に関心が高かったという。また3連休と重なったことで最終日まで混雑し、取材時の印象では2024年より約1.5倍の来場があったように感じられた。さらに、大谷翔平選手の等身大の黄金像展示は、金製品目当て以外の大谷選手ファンからも注目を集めていた。

関心の高さから販売も好調で、「期間中の売上高は小売価格の上昇以上に伸びた」とのことで、1枚200~300万円程度の小判を中心に、「おりん」などの仏具も「資産として残したいという高齢者の方の購入が多かった」という。買い取りについても、高齢者の方を中心に金額・相談数ともに昨年を上回ったとのこと。一方、若年層は少なく、若い来場者の間ではさらなる値上がりを期待する声も聞かれたようだ。

本イベントは今年も開催予定なので、昨年見逃した方はぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。

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