どうなる?トランプ関税
公開日:2025.10.08

第二次トランプ政権発足後、自国の貿易赤字解消や国内産業の保護を目的として打ち出された関税政策。二転三転するトランプ大統領の発言に振り回されているが、今回は、9月末時点でのトランプ関税の概要と関税政策を巡る日米の動きを整理するとともに、県内の輸出動向を取りまとめた。
INDEX
トランプ関税
トランプ関税は大きく分けて①ベースライン関税、②相互関税、③品目別関税、④国別関税の4種類に分けられる(図表−1)。日本に対しては米国が個別に指定する品目(自動車・鉄鋼など)には③、それ以外の幅広い品目には①と②が課される。

トランプ関税を巡る日米の動き
相次ぐ引き上げと一時停止
品目別関税では3月に鉄鋼・アルミへの25%、4月には自動車に25%が発動、6月には鉄鋼・アルミが50%に引き上げられた。ベースライン関税、相互関税では、4月2日にベースライン関税10%に加えて24%の追加相互関税を課すと発表があったものの、一転して4月9日には一時停止が発表された。
合意と大統領令の相違
その後は日本政府が粘り強く交渉を重ね、7月22日に「一般関税率*と相互関税を合わせて15%」「自動車の品目別関税は15%」に引き下げることで合意に至った。しかし、大統領令には「一般関税率に相互関税15%を追加」という内容で署名され、自動車に関しては記載がないことが判明し、対応に追われた。
大統領令の修正
最終的には9月4日に、7月時点で合意した内容の大統領令に署名、9月16日に発動された(図表−2)。これにより、日本に対する関税政策は一旦の区切りを迎えたが、銅や鉄鋼・アルミ製品への関税率は依然として50%のままである。(図表−3)。


なお、米連邦裁は相互関税が大統領の権限を逸脱し違法だとする判断を示しており、今後、最高裁の判断次第では混乱に陥る可能性がある。
愛媛の輸出動向
輸出額の推移
愛媛の2025年上半期(1~6月)の輸出額は4,117億円(前年同期比3.1%増)となり、2022年から4年連続で増加した(図表−4)。

国別の輸出割合
国別では「船舶類」を中心としたパナマが21.2%で最も高く、次いで台湾(17.4%)、中国(15.6%)となった。米国は3.7%と全国平均(19.3%)に比べて低い。
対米輸出状況
県内の2025年上半期(1~6月)の対米輸出額は154億円(同▲5.6%)となり、足元では2ヵ月連続で前年割れとなった(図表−5)。

対米輸出額の約3割を占める「金属鉱およびくず」は、25%の追加関税が発動された3月に大幅減となったが、4月・5月は更なる関税の引き上げを見越した駆け込み需要によりプラスに転じたと考えられる(図表−6)。その後、6月4日に50%へ引き上げられると、6月は前年同月比65.7%減、7月も同63.3%減となり、鉄鋼・アルミ製品への高関税率が影響したと思われる。

おわりに
2025年上半期の愛媛の輸出額は、全体ではプラスとなったが、対米ではトランプ関税の影響もあり、マイナスとなった。県内企業の対米輸出割合は全国に比べて低く、県内経済に与える影響は限定的と言えるが、第三国を経由した対米輸出や世界経済に与えるインパクトを考慮すると、影響は小さくない。日本に対する関税は最悪のシナリオを脱したものの、一時停止中の米中間の関税や関税を巡る米国最高裁の判断など不安材料もあり、今後の動向に注視したい。
一覧へ戻る