イノベーションへの第一歩
株式会社いよぎん地域経済研究センター(IRC)代表取締役社長 / 矢野 一成
公開日:2025.09.22
私は元来、快楽主義的人間である。いきなり何を言うのかと思われるかもしれないが、快楽主義とは経済学者シュンペーターによって分類された人間行動の一類型である。イノベーションの起こらない静的経済において、一定の条件下で拘束を受け入れたうえで自分の欲求を満たすべく合理的に行動することらしい。換言すれば、快楽主義的行動とは経済合理性のある行動であり、多くの方が当てはまるのではないだろうか。さらに、シュンペーターはイノベーションを起こすには快楽主義的人間から精力的人間に変わらなければならないと述べている。
数年前、私は己の類型を快楽主義的人間から精力的人間に宗旨変えすることを決意した。なぜなら、今までにない最新型の銀行店舗の運営を任され、支店業務自体のイノベーションがミッションとなったからである。
さて、弊社の調査によると、高校生の約半分が県外への就職・進学志向と確認されている。Uターン就職は一定数あるものの、大企業を中心とした賃金上昇の潮流から若年層の大都市圏集中に拍車がかかっており、少子化による生産年齢人口の減少と相まって人手不足は加速度的に深刻になるだろう。その難題を乗り越えるためには全社的にリスキリングを推進してDX化を図る、すなわちビジネスモデルにイノベーションを起こして生産性を向上させるしか道は残されていないのである。
弊社においても、精力的な改革に着手した。紙ベースの業務フローは片っ端からグループウェアのアプリに移行し、各人が使っていた袖キャビは全て廃棄させたうえで、フローとストックの両面からペーパーレス化を進めている。経理事務はクラウド化し、勤怠管理もシステム化した。セキュアなパッケージ型AIを導入して、企画立案から文章作成および推敲に至るまで、オリジナリティーを損なわない程度に人工知能の力も借りている。そして、イノベーションが沸き起こる組織を目指して社員のDX・リスキリング研修も開始した。
弊社が毎月発行しているIRC Monthlyも例外ではない。刷板→印刷→製本→物流というプロセスをショートカットして、知りたい情報をタイムリーにお届けするという本来あるべき姿を思い描き、会員の皆さまにメールアドレスの登録をお願いしているところである。
一方で、紙冊子を残して欲しいというご意見もいただいており、会員の皆さまの実情に合わせた着地点を模索している。月報のメールマガジン化という、弊社にとって最大級のイノベーションを今後も精力的に進めていく所存である。引き続き、皆さまからの忌憚のないご意見をお待ちしている。
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