【税務編】
新リース会計基準と税金上の取扱い
公開日:2025.09.22
Q. リース取引の会計が新しくなるそうですが、会計と税務両面で気をつけることはありますか。
A. 2024年9月13日、企業会計基準委員会(ASBJ)からリースの会計処理を抜本的に見直す会計基準等の改正が公表されたことに伴い、令和7年度税制改正でリース取引に関する整備が行われました。
〈リース会計〉すべてのリース取引を「使用権の取得」と捉えて使用権資産を貸借対照表に計上(大企業対象、2027年4月以降事業年度から、2025年4月以降事業年度からの早期適用可能)
〈税制改正〉オペレーションリース:従来通り賃貸借取引を前提とした取扱いで、「リース料としての債務が確定したもの」を損金計上することとされました。
INDEX
リース会計の変更内容
今回の変更内容の概要は下記のようなものです。
① ファイナンスリースに限らず、オペレーションリースも含むすべてのリース取引を「使用権の取得」と捉えて使用権資産を貸借対照表に計上します。
② 2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されますが、2025年4月1日以後開始する事業年度の期首から早期適用することも可能です。
③ 上場企業が対象となり、中小企業には基本的に影響がないと考えられます。
オペレーションリースとは
リース取引は、ファイナンスリースとオペレーションリースに大きく分けられます。ファイナンスリースとは、リース期間中に契約解除できないもので、リース物件の取得価額と諸経費のほぼ全額を借り手が支払います。こちらは固定資産として計上することが基本です(賃貸借として処理することも可能です)。
これに対して、オペレーションリースは、ファイナンスリースに該当しないリース取引とされており、借り手は一定期間のリース料のみを支払い、期間満了後は資産を貸し手に返却することが前提となっています。
新リース会計による経理処理
新しいリース会計による会計処理は、右図のようなイメージです(リース会計基準等の資料から作成)。
リース資産は、固定資産ではなく、「使用権資産」として計上し、リース期間に応じて減価償却します。同時にリース債務を計上しますが、使用権資産は現在の割引価値であることから、支払利息が発生します。
令和7年度税制改正における法人税法の対応
令和7年度税制改正では、会計基準の変更に対応する形でオペレーションリースへの取扱いについて触れられています。それによれば、従来通り賃貸借取引を前提とした取扱いで、「リース料としての債務が確定したもの」を損金計上することとされました。この結果、会計上と税務上の処理について不一致が生じる可能性が出てきます。
なお、償却資産の取扱についても、法人税と同じ考え方で、リースの貸し手の所有資産として償却資産の申告を行うこととなります。
消費税の対応
ファイナンスリースに関しては、原則として資産の引渡しを受けたときに課税仕入があったものとして仕入税額控除を適用可能ですが、オペレーションリースについては、資産の売買ではなく賃貸借として処理され、その都度仕入税額控除を受けることとなりそうです。
中小企業としての対応
今回は、上場企業中心の改正ですから、中小企業として特に変更が必要となる可能性はないと想定されます。しかし、リース取引を債務と認識して自社の財務内容を認識することは重要であり、改めて現状のリース契約を確認された方が良いと思います。
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