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各種調査レポート

【法務編】 試用期間中の本採用拒否

経営・実務Q&A

【法務編】
試用期間中の本採用拒否

公開日:2025.09.22

弁護士法人たいよう 弁護士 林 寛大

Q. 新しく採用した社員が思ったほどの能力がありません。まだ試用期間中なので本採用を見送ろうと思いますが、注意点はありますか。
A. 試用期間は法的には解約権留保付労働契約です。本採用拒否は労働契約の解約、つまり解雇になるため、適法に行うには合理的な理由が必要です。

試用期間とは

試用期間とは、一般に、試用期間中に研修などを行いながら能力や適性を見極め、本採用、配属先を決定することを目的とします。法的には解約権留保付労働契約であり、労働関係法令が適用されます。

試用期間の長さ、延長

試用期間中の労働者の地位は、会社が解約権を持っているため不安定です。したがって、試用期間を設ける目的や研修の実施状況等に照らして、長すぎる試用期間は無効となります。
試用期間の長さについて明確な基準はありませんが、国家公務員については試用期間6ヵ月と定められています。民間企業も6ヵ月以内で定めることが無難でしょう。
試用期間の延長の有効性についても、本採用するには疑問が残り選考のために更に時間が必要である場合等、合理的な理由の有無が厳格に判断されます。

試用期間を設けるうえでの注意点

試用期間を設けるには契約上の根拠が必要です。試用期間の長さ、延長の条件、解雇される場合はどのような場合かを、就業規則や契約書で明確に定めておく必要があります。

本採用拒否の条件

解約権を留保しているため一般の解雇よりは本採用拒否(解雇)は広く認められますが、自由に本採用拒否ができるわけではありません。客観的に合理的な理由があることと、社会通念上相当であることが必要です。
本採用拒否の有効性の判断は、

①業種や会社の特性、求められる社員の職種や水準といった個別事案ごとの評価

②試用期間が設けられた目的に照らした評価

という2つのポイントがあります。

例えば、専門性を期待して職種を特定した中途採用の場合には、当該職種における適格性・業務状況が検証されます。使用者は、当該中途採用者が当該職種にとって常識的に必要な能力、採用時に特に説明した能力が欠如していたことを説明できればよいことになります。
他方、新卒採用者には専門性の期待が強くないため、正社員としての最低の適正すらなく、どの業務も任せられないことを説明する必要があります。研修・指導が妥当だったかも問われます。使用者は、新卒採用者に正社員の基礎を習得するために十分な研修・指導を実施し、配属の決定も個性に応じて適切に行ったが、当該新卒採用者に正社員として最低の適正がなかったと説明できなくてはなりません。

使用者の対応

試用期間は、採用時に知りえないことを確認する目的もあるため、そもそも採用時に容易に知りえた事実を理由に本採用拒否することは困難です。まずは採用時の事実確認をきちんと行うことが大切です。
改善の傾向があるのに解雇した点を使用者側の問題として指摘した裁判例もあるため、試用期間中には、目標の設定や達成度の評価を本人にフィードバックし、改善の機会を与える等の適切なプロセスが必要です。本採用拒否に備え、プロセスを記録化しておくことが大切です。
専門性を期待した中途採用の場合には、どのような専門性が必要か具体的に明示したうえ、期待した水準に満たない仕事を発見した場合、こまめに指摘しましょう。
トラブル防止には、適切なプロセスを経ることと、本採用拒否の理由を具体的に説明できることが大切です。

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