福岡県福津市の一次産業を守り続ける地域商社
〜一般社団法人「福津いいざい」による官民連携の取り組み~
公開日:2025.09.26

全国の地方銀行9行による「地域再生・活性化ネットワーク」の共同企画として、各地の地域活性化に向けた取り組みをご紹介するコーナー。今回は、福岡県福津市で一次産業の課題解決に取り組む一般社団法人「福津いいざい」(地域商社)の活動を紹介します。
INDEX
心ほどける海と歴史のまち、福岡県福津市
福岡県北部に位置する福津市は、美しい自然環境と豊かな歴史文化が魅力の地域です。西側には福間海岸、宮地浜、津屋崎海岸と約3kmに渡る遠浅の海岸が広がり、マリンスポーツが盛んで、お洒落なカフェも点在しています。干潮時には砂浜が鏡のように空を映し出し、幻想的な光景を生み出す「かがみの海」が広がり、フォトスポットとして高い人気を誇ります。
また、福津市は「宮地嶽神社」が有名で、多くの参拝者が訪れる信仰の中心地です。この神社では、特に「光の道」と呼ばれる現象が話題となり、毎年多くの観光客を惹きつけています。
福岡県でも人気のスポットとなっている福津市ですが、見過ごせない課題も抱えています。福津市では古くから農業、水産業が盛んであり、脈々と受け継がれてきました。しかし、一次産業が盛んな地域では、高齢化により生産者は減少の一途をたどっています。背景には若者の人口流出による後継者不足という課題がありました。
福津市にとって、一次産業は地域経済の大切な柱です。この状況を解決するために福津市役所、市内3つの直売所、関係団体で協議会を立ち上げ、一般社団法人「福津いいざい」(以下、福津いいざい)という地域商社を設立しました。設立にあたり、FFGビジネスコンサルティングは、事業計画の策定、協議会運営のサポート、設立後の伴走支援などを行い、本事業を支援してきました。
一次産業を守り続ける地域商社福津いいざい


今回、福津いいざいの代表理事を務める森田誠氏にお話を伺いました。北九州市八幡西区出身の森田氏は、卒業後、設計補助の仕事をしていましたが手に職をつけるために魚屋に転職。そこで目利き・加工・販売のノウハウを身につけ、親戚の住む海と自然が豊かな福津市の魅力に惹かれ漁師町の津屋崎町に転居することを決めました。津屋崎祇園山笠という地域行事を通じて町が一つになり、人情あふれる人が多いところがこの町の良さと語ります。
福津いいざいを構成する3つの直売所は、水産に強みを持つ「お魚センターうみがめ」、海側で生産される農産物と生花を中心に販売する「あんずの里市」、山側で生産される農産物を販売する「ふれあい広場ふくま」があり、それぞれに特色を有した直売所です。
取り組みの一つである「福津市産品の市内供給拡大事業」では、これらの直売所で農産品と水産品を相互に供給し合うことで品揃えを充実させ、利用客の満足度向上につなげています。
福津いいざいの仕入れの特徴として、農産品と水産品のどちらも生産者から直接仕入れるという点があります。直接取引を行い、価格も市場価格にすることで生産者への利益還元を実現しています。生産者は輸送費や手数料がかからないという点でも大きなメリットとなっています。
その他の取り組みとして、市内の飲食店や学校給食にも福津市産品を供給する地産地消(地産地商)にも貢献しながら、小中学校の学校給食の時間に福津市で獲れる鯛の説明を行うなどESD(持続可能な開発のための教育)活動にも取り組んでいます。
福津いいざいホームページはこちら
https://fukutsuiizai.or.jp/index.html
福津市の食材を活用した持続可能なPR商品の開発
一方で、福津いいざいの地産地消(地産地商)の取り組みだけでは、一次生産者を支えていく上で、収益向上という経営面での課題があり、福津市をPRするお土産品や自社商品の開発、ふるさと納税への出品も進めてきました。
福岡県の鯛の漁獲量は2023年に約2,126トンで全国3位となっており、福津いいざいでは天然真鯛の加工品として「鯛茶漬け」や「鯛めし」の製造・販売を行っています。更にSDGsの取り組みとして、従来廃棄されていた部位を活用した「万能だし鯛」を開発しました。
また、福津市役所との連携により、日本航空株式会社(以下、JAL)や全日本空輸株式会社(以下、ANA)とのPR商品開発にも取り組んでいます。
JALとの連携では、「JALふるさとプロジェクト」の一環として、福津市で漁獲されたトビウオを活用した出汁パック「空飛ぶあごだし」の発売を2025年8月1日より開始しました。この商品も本来廃棄されていた部位を有効活用し、旨み豊かな「あごだし」に仕上げた商品です。また、福津産のはちみつ・米粉を使用した「チーズサンド福津ハニー」も共同開発しています。
ANAとの共同開発では、「海を食べるクッキー」の販売を行っています。海産物の風味を活かしたクッキーで、鯛・イカ・あごの3種類の味が楽しめ、福津市で獲れた天然の鯛や、米粉など地元の素材にこだわって作られています。


一次生産者と成長を続けていくために
今後も一次生産者が安心して働ける環境づくりのため、福津いいざいは成長を続けていく必要があると森田氏は語ります。
現在、福津いいざいには34名の従業員が在籍しており、福津市に新たな雇用の場を生み出しています。今後も官民が連携しながら、地域の発展と持続可能な成長に貢献し、地域の未来を支え続けていきます。
※本記事は2025年8月31日時点の情報です。(文責:株式会社FFGビジネスコンサルティング)

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