最低賃金の決め方と留意点
社会保険労務士法人 人的資源研究所
特定社会保険労務士・人事コンサルタント / 平尾 由紀
公開日:2025.10.08

Q. 12月適用の愛媛県の最低賃金が決定しました。最低賃金の決め方や留意点について教えてください。
A. 愛媛県の最低賃金は、12月から1,033円になるようです。今年も上昇額が大きく、地元企業では悲鳴が上がっています。最低賃金の決定方法、最低賃金(時給)の計算方法などについてご紹介します。
INDEX
最低賃金とは
最低賃金は、1959年に制定された最低賃金法で定められました。「地域別」と「特定(産業別)」の二種類があります。労働者・使用者双方の合意の上で、最低賃金額より低い賃金を定めても、この法律によって無効とされ、最低賃金額の支払い命令を受けます。「地域別」を下回る賃金しか支払わなかった場合、使用者には上限50万円の罰金が、「産業別」の場合には上限30万円の罰金が課されます。ちなみに「地域型」「特定」の両方の適用があった場合、比較して高い方の最低賃金を守る事とされていますのでご留意ください。
最低賃金の決定
まず「中央最低賃金審議会」(公益代表、労働者代表、使用者代表が同数)が「労働者の生計費」「労働者の賃金水準」「事業所の支払能力」の観点から引き上げ額の「目安」を提示します。
当該「目安」を受けて「地方最低賃金審議会」が地域の実情に応じて審議を行い、都道府県労働局長が最終決定します。
産業ごとの最低賃金を設定する「特定(産業)最低賃金」は、必要に応じて関係労使からの申出により審議されます。
最低賃金の対象となる賃金とは
最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金から次の各項目を除外したものが対象となります。
①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
②1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
③時間外割増賃金など
④休日割増賃金など
⑤深夜割増賃金など
⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
最低賃金(時給)をクリアしているかの計算
Aさんに支給された賃金から、最低賃金の対象とならない通勤手当、時間外手当を除き、一か月の所定労働時間を除して時間給を算出します。
220,000円 −(5,000円+35,000円)= 180,000円
(180,000円 × 12ヵ月)÷(250日 × 8時間)= 1,080円 > 1,033円
となり、Aさんは最低賃金法をクリアしていることになります。

今後の動向
石破政権下では10年以内に最低賃金を42%アップして全国最賃平均を1,500円に引き上げる目標を掲げています。しかし、企業側では難しいという見方も多く、中小企業の負担感や倒産リスクなどを懸念する声も多く聞かれます。
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