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各種調査レポート

アニメがつなぐ日本とベトナム 伊予銀行国際部 マイ・インターナショナル駐在

海外だより

アニメがつなぐ日本とベトナム
伊予銀行国際部 マイ・インターナショナル駐在

公開日:2025.10.08

田中 貴也

ベトナム語で【Đôrêmon】と表記される言葉は、日本のアニメキャラクター『ドラえもん』を表しています。ドラえもんは、ベトナムでは大人から子どもまで幅広い世代で知られています。日本のアニメの認知度は世界的に向上していますが、ベトナムでも日本の「アニメ」が大変人気です。都市部の書店やカフェからSNSのタイムラインまで、アニメに関連する話題は生活のあちこちに溶け込んでいます。今回は、ベトナムにおける日本のアニメ文化についてご紹介します。

ジャパニーズフェスティバルの様子

ベトナムにおける日本アニメの歴史

1980年代後半から1990年代初頭にかけ、日本や旧ソ連、中国の作品がテレビで紹介され、子ども向け番組として広まったことが、日本のアニメがベトナムに紹介されるきっかけとなりました。

1992年には『ドラえもん』が放映され、1996年の正式ライセンス化を契機に日本アニメ・マンガは急速に普及しました。2000年代には『ドラゴンボール』『スラムダンク』『名探偵コナン』『ナルト』などが地方局でも放送され、国民的人気を獲得するとともに、コスプレや同人誌などオタク文化も若者に根付きました。

ファミリーマートベトナムの棚の様子

2010年代にはYouTubeやNetflixを通じ視聴が容易になり、FacebookやTikTokの普及によりファン同士の交流も活発化、ベトナム語吹き替えや字幕も増加しました。2020年代には『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『スパイファミリー』などが映画館で大規模動員を記録し、グッズやコラボカフェも展開され、アニメは娯楽を超えて一大ビジネスへと成長しました。

ベトナムに広がる日本アニメ熱

ベトナムは娯楽の選択肢が限られている国です。日本のようにディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、あるいはラウンドワンのような大型娯楽施設はありません。
日中は暑さが厳しく屋外で遊びにくいため、週末にはショッピングモール内の室内遊園地やゲームセンターが定番の遊び場になっています。そうした環境の中で、映画館は貴重な娯楽空間として定着しています。映画市場のなかで、日本アニメ作品も着実に存在感を強めています。映画興行データサイトの集計によると、『劇場版 呪術廻戦0』(2022年)は87万ドル超、『鬼滅の刃 柱稽古編』(2024年)は51万ドル、『THE FIRST SLAM DUNK』は32万ドルの興収をあげました。さらに2025年8月に公開された『鬼滅の刃 無限城編』は、公開初週末だけで250万ドルを突破し、大きな話題を呼んでいます。

鬼滅の刃の最新映画情報

AEONグループの大規模投資

イオングループは、ベトナムを海外最大の戦略的投資先と位置づけ、これまでに累計12億ドル以上を投資してきました。国内の店舗数を現在の6店舗から20店舗以上へ拡大する計画を正式に発表しており、今後も出店が加速する見通しです。また、関連会社のイオンエンターテイメントは映画館「イオンシネマ」の展開を進めており、約300億円を投じて全国で50館以上の開業を目指しています。
ベトナムでは韓国系映画運営会社が市場の45%を占めていますが、イオングループは商業施設と映画館の両輪で事業を拡大する方針です。日本国内では出店が飽和状態に近づくなか、同社は成長余地の大きいベトナム市場で投資を加速させています。

おわりに

アニメは多くのベトナムの若者にとって単なる娯楽以上のものとなっています。私のベトナムの友人の中には、アニメのTシャツを身に着けたり、キーホルダーを鞄に付けたりするだけでなく、漫画の有名なセリフをタトゥーとして刻む人もいます。
現在、日本において外国人技能実習生として最も多く来日しているのはベトナムの方々です。実習を終えて帰国した人の中には、日本食の店を開業する人やアニメショップを開く人、さらにはコスプレ大会を主催する人など、さまざまな形で日本文化を広める姿が見られます。
日本文化を積極的に受け入れ、自国において新たな価値として表現してくれるベトナムの方々の姿は、日越交流のさらなる発展に大きく寄与するものであり、心より有難く思います。 
アニメに限らず食文化をはじめとした多様な分野での交流を通じて、日越両国の絆が一層深まり、より豊かな関係が築かれることを強く期待しています。

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