IRCニュー・リーダー・セミナー34期
国内研修旅行(2025.3.13~14)
公開日:2025.09.22
次代を担う若手経営者の学びの場として、1989年より開催しているIRCニュー・リーダー・セミナー。年1回の海外研修旅行は同セミナーの目玉だが、今回新しい試みとして、国内での研修旅行を実施した。セミナー生32名とともに、「四国でいちばん大切にしたい会社大賞」受賞企業や業界を牽引するトップメーカーを1泊2日で訪問した。
INDEX
株式会社北四国グラビア印刷
最初に訪れたのは、香川県観音寺市で食品用の包装フィルムなどの印刷を手がける株式会社北四国グラビア印刷だ。
まず奥田拓己社長から、同社の歴史と「しくじり体験」と称した過去の反省や失敗のエピソードをお話しいただき、続いて5名の社員の皆さまに、経営理念やその実現のために取り組まれている「全員参加経営」について具体的にご説明いただいた。
経営理念を行動に結びつけるためにつくられたクレド(私たちの信条:24の行動目標)は、自社の特徴や印刷用語など馴染みのある言葉が散りばめられ、それを全社員が常に携帯し朝礼で読み合わせて意識の徹底を図っている。読み合わせは毎回くじ引きでグループに分かれて行い、異なる部署・年代のメンバーで話をすることでコミュニケーションの向上にもつながっているそうだ。
全社員の時間管理とコストに対する意識を高める部門別採算制度や、5SやQCといった委員会活動、人材育成などの説明を聞き、社員一人ひとりが「私たちの会社は私たちがより良くしよう」という意識をもって働いていることを強く感じた。
その後、セミナー生は4班に分かれ、新入社員の田中さん、2年目の井上さんから、順番に社内を案内していただき、昨年の新入社員チームが製作した「当社の強み」をテーマとした動画も見せていただいた。社歴の浅い2人が会社の取り組みについて堂々と話し、セミナー生からの質問にも丁寧に答える姿に、同社の教育が行き届いていることを実感した。
最後は奥田社長との質疑応答が活発に行われ、セミナー生一人ひとりが「人を生かす経営」について考える機会となった。
参加者の声
▶浅川造船㈱ 浅海 真
奥田社長の考え方が社員一人ひとりに浸透していた。その背景には率先垂範する社長の姿勢が大きいと感じた。
▶㈱ユアーズネクスト 有光 駿汰郎
社員全員が立ち上がって挨拶してくれたことに感動した。奥田社長の「関わる人たちが皆幸せに」という言葉に共感し、同社のような会社をつくりたいと気を引き締めた。
▶㈱ユイ・システム工房 稲葉 皓大
トップダウンとボトムアップをうまく組み合わせ、互いに承認やコミュニケーションを行う仕組みづくりが勉強になった。
▶㈱ヨコハタ 勝本 翔平
日次決算による売上や利益の「見える化」がとても良かった。自身の取り組みが数字に反映され、社員のモチベーションアップにつながる。
▶㈱近藤機工 近藤 大記
皆が「全員経営・全員製造」の意識をもって取り組んでいた。自社でも見習うべきところであり、自分なりにアレンジして取り入れてみたい。
▶㈱メディックス 権名津 太志
新入社員の頃から各自で目標設定・計画実行する仕組みがあり、それが社員の主体性につながっている。5SやQCといった委員会活動は、今後自社にも取り入れたい。
▶㈲ボイス 佐伯 祐輔
社員一人ひとりが主役となり、自発的に行動する文化に驚いた。それを築きあげた奥田社長たちの努力を随所に感じた。
▶佐川印刷㈱ 佐川 央晃
一人ひとりが自分の言葉で、堂々と会社の取り組みを説明する姿は、自律型人材育成の成果を物語っている。
▶㈱Saku Saku 田村 由美
当社でも改善活動や5Sに注力しているため、共感や気づきが多かった。特に、職場環境の良さや社員の主体性に非常に感銘を受けた。
▶㈴松浦土建 松浦 一生
クレド内の「PDCA」の「Do」と「Action」が太字で表現されており、想いを伝えるだけでなく、それぞれが行動を起こすことを特に大切に考えていると感じた。
▶森実機工㈱ 森實 亮
社員の皆さんが自社に愛着があり、また、他社に負けたくないという強い想いも抱いていることが印象的だった。
タオル美術館(一広株式会社)
翌日は、タオル業界トップクラスのシェアを誇る一広株式会社が運営するタオル美術館を訪問した。
タオル美術館は「タオルを見て、楽しんでもらいたい」という想いで2000年に開館、今年で25周年となる。趣向を凝らしたタオルアートの展示や同社タオル製品の販売をはじめ、季節の花で彩られた庭園やカフェ・レストランも併設され、さまざまな人が楽しめるエンターテイメント施設である。
4階シアターで越智利咲枝館長からご挨拶をいただいた後、会社紹介動画を視聴した。その後、朝倉工場の一部と館内を見学させていただいた。
工場には織機16台が並び、例えば、フェイスタオルだと1日16,000枚が製造されている。温度管理や清掃を徹底して質の高いタオルをつくっている様子に、セミナー生は関心を示していた。
ギャラリーには『ムーミン』『ピーターラビット』などのタオルアートや刺繍が並び、幼い頃から親しんだキャラクターがイキイキと表現されている作品を見ながら、皆顔をほころばせていた。
同社の製販一貫体制やブランディングの一端を体感することができた。
参加者の声
▶㈱ネクスタ 安藤 朋晃
普段何気なく使っているタオルにも、さまざまな技術や工夫が施されていることを知り、興味深かった。
▶泉製紙㈱ 宇高 剛政
「メーカーは製造だけでない、トップの考え方やアプローチの仕方で可能性が広がる」と、新しい発見につながった。
▶小河運送㈱ 小河 斗真
徹底した品質管理から、タオルづくりへの情熱を感じられた。業種に関わらず、自社の取り組みには強い想いをもつことが大切だと感じた。
▶㈱大和商會 川崎 紗恵子
訪れるお客さまに楽しんでいただくために、さまざまな工夫が凝らされていた。これは同社のファンを増やすことにもつながっている。
▶㈱ダッシュ速配 中村 涼
主業のタオル製造・販売以外に複数の事業を展開することが会社を長く続ける秘訣と感じた。自社でも何ができるか、何を応用するか、考える機会となった。
▶㈱タクト野田 野田 照裕
工場内が美しく保たれていることに、同じ繊維を扱うメーカーとして感動した。開館から20年以上経っているにも関わらず、美術館もきれいで、随所に創設者のタオルへの想いを感じ取れた。
▶えひめ洋紙㈱ 山本 智貴
タオルという日用品にデザイン性をもたせて新たな価値を生み出しているのが印象的。今後の展開次第で、多様な業界とのコラボレーションが期待できる。
日本食研ホールディングス株式会社
最後の訪問先は、『晩餐館焼肉のたれ』『焼肉のたれ宮殿』など「たれ類出荷量日本一」を誇る日本食研ホールディングス株式会社である。
まずはセミナー生を2班に分け、KO宮殿工場やハム研究工場、日本食研歴史館、世界食文化博物館を見学させていただいた。
KO宮殿工場は、オーストリアのベルヴェデーレ宮殿をもとにした豪華絢爛な外観が印象的だ。内部では大半の工程が自動化され、たれやドレッシング、粉末調味料などの多品種少量生産を可能にしている。身近な製品がどんどん自動的に製造される様子にセミナー生は感嘆の声を漏らしていた。「“見せる工場”が企業や製品の安心感や信頼感をつくっている」「『食文化の発信・発展に貢献したい』という強い想いを感じた」などの感想が聞かれた。
見学後は、大沢一彦会長から創業の経緯やご苦労、経営で大切にしていることなどをお話しいただいた。一代で年商1,500億円(グループ全体)の大企業を築いた創業者の話を直接聴ける貴重な機会に、皆熱心に耳を傾けていた。
「経営者として成功するためには哲学が必要」「社員を信じ、任せることが大事」「常に勉強すべき」など、ニューリーダーたちへの熱い激励もいただいた。さらに、大沢会長から「何でも聞いてほしい」と声をかけていただいたことで、セミナー生は次々と手を挙げて質問し、積極的な意見交換ができた。大先輩から、これまでの経験に裏打ちされた言葉をいただき、経営への想いを新たにしたセミナー生も多かったようだ。"
参加者の声
▶イーストコーポレーション㈱ 東 尚德
工場は自動化・効率化が進められ、衛生管理もしっかり行いながら、社員の労働環境にも配慮されていた。「関係する人皆大切にしたい」という会長の想いが反映されているように思う。
▶㈱荒木組 荒木 洸太郎
KO宮殿工場の建造はかなりのコストがかかったと言うが、企業PRはもちろん、社員の会社への愛着と誇りに直結する、うまい仕掛けだと感じた。
▶㈲伊藤精工所 伊藤 太一
会長はとにかく人が好きな方だと感じた。そういう方だから人が集まり、一代であれほどの大企業を築き上げられたのだろう。
▶(同)発達の木 今岡 健一
会長のお話は、私の理念と共通することが多く、深い感動をおぼえた。経営者としての道を肯定していただいたように感じた。
▶㈱建築工房小越 小越 拓海
「できることは何でもやる」という考えに特に共感した。新規事業の展開に、この考えをもって取り組んでいきたい。
▶㈱サンヨーアメニティ 白石 雄一
会長の話し方や質問への対応が常に低姿勢なのが印象的だった。あの実績があっても、それを貫けるのが素晴らしい。
▶義農味噌㈱ 田中 大介
数多くの苦労をして十分に知識や経験が備わっているにも関わらず、飽くなき探究心をもたれている会長に驚いた。この姿勢こそが会社を大きくする原動力だと感じた。
▶㈱アテックス 村田 博昭
大沢会長のお話から「何事も挑戦する」「計算で考えず、まずは行動する」大切さを強く感じた。何時間でも聴きたい、学びの多い講演だった。
▶みすまる産業㈱ 森實 優雄
ただ製造するだけでなく、食文化全体を考え、発信していくことに独自性を感じる。自社の強みは何か、どう引き出すか、その重要性も学べた。
▶三ツ浜汽船㈱ 渡部 徹
大沢会長のきめ細かい研究や食への情熱が具現化された工場・博物館だった。時間が足りなく感じるほど、充実した時間を過ごすことができた。
▶㈱伊予銀行 上田 崇喜
大沢会長は部下に任せることで、広い視野で物事を俯瞰して新たな事業を開拓し、部下とともに会社を大きく成長させてきたのだと感じた。
おわりに
参加者の声
▶フジリネンサプライ㈱ 小川 靖人
企業訪問での学びだけでなく、同年代のメンバーがどのような考えや視点をもっているか、質問の質や聞き方からも多くの気づきを得られた。
▶㈱丸鬼商店 豊島 広之
それぞれの会社の取り組みは異なるが、人との向き合い方や想いの共有などが共通していると感じた。私も自分の想いを伝えながら、社員と向き合っていきたい。
▶三原産業㈱ 三原 大誠
旅行中は同期と深い話ができ、一生懸命に、そして楽しそうに会社の未来を語る姿に大いに刺激を受けた。友人とはまた違う「語らい」ができる仲間とともに、地域を盛り上げていきたい。
あっという間の2日間でしたが、それぞれ多くの気づきや学びを得て、経営への想いをいっそう強くした有意義な機会となりました。また、同じ時を過ごしたセミナー生同士の絆もさらに強固になったように感じました。
訪問させていただいた企業の皆さまには多大なご支援、ご協力をいただきました。本誌面を借りて、厚くお礼申し上げます。
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