【税務編】
使用人に対する決算賞与の注意点
公開日:2025.09.22
Q.当社では今期決算で想定以上の利益が出たため、期末賞与の支給を検討しています。どのようなことに注意すれば良いでしょうか。
A. 法人税法上損金として認められる賞与には細かい規定があり、特に計上できる時期が問題となります。また、税金以外にも関連する項目があるのでそれらを踏まえて検討して下さい。
INDEX
使用人に対する賞与の損金算入時期
就業規則等で定められる支給予定日が到来している賞与
→ その支給予定日または通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度
A~Cすべての要件を満たす賞与
A. その⽀給額を,各⼈別に,かつ,同時期に⽀給を受ける全ての使⽤⼈に対して通知をしていること
B.Aの通知をした⾦額を通知した全ての使⽤⼈に対して,通知⽇の属する事業年度終了の⽇の翌⽇から1⽉以内に⽀払っていること
C.Aの通知⽇の属する事業年度において損⾦経理をしていること
→使用人への支給額を通知した日の属する事業年度
上記以外の賞与
→賞与の支払日の属する事業年度
決算賞与については、上記⑵のケースで未払計上するケースが多いと想定されるため、ここではこの形態の賞与について検討します。
賞与規程の確認
就業規則等で賞与について規定している場合、「支給時期に在籍していない場合は賞与を支給しない」旨規定されていることがあります。この場合、法人税基本通達により、上記のAに規定された通知にならない(損金計上が認められない)こととされています。仮に支給時期までに退職者がいなかったとしても、この規定の存在により損金算入できないことがありますので、注意して下さい。
社会保険料の未払金処理
決算期末に翌月末の社会保険料の内、会社負担分を法定福利費として未払計上することがあります。決算賞与の場合は、翌月末にならないと社会保険料が確定しないので、期末で未払金計上したとしても、損金算入は認められません。
賃上げ税制への対応
前年度より給与等の支給額が増加した場合で、一定の要件を満たしているときは、増加額の一部を法人税から控除できる賃上げ促進税制については、損金算入できる未払賞与も計上した事業年度の給与等に加算することができます。
税務調査での注意事項
法令上、未払賞与の損金計上が認められるためには、年度内に使用人に対して「支給額を通知」することが求められています。そのため、具体的な金額の通知を行うことが想定される書面やメール、業務上のチャットなどで支給額を年度内に通知した旨の証拠資料を残しておき、税務署に開示できるようにしておくことが必要です。
税務調査の際に、年度内に通知した文書が提示されたものの、実際の通知は翌事業年度であると判断された結果、その文書が「隠蔽し、又は仮装」したものとして重加算税の対象となったケースがあります※。
決算期末に未払賞与を計上しようとする場合、法令上、①年度内に、②各人別の金額を通知し、③その内容を何らかの形で保存することが必要です。そのためにも、正確な財務状況を早めに確認できる経理体制の構築が重要です。
※ 国税不服審判所による令和5年12月13日裁決
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