【労務編】
職場における熱中症対策の強化
公開日:2025.09.22
Q. 2025年6月1日に施行された「職場における熱中症対策措置の義務化」について説明をお願いします。
A. 暑さ指数28以上または気温31℃以上の環境下において、継続して1時間以上または1日あたり4時間を超えて作業が行われることが見込まれる作業場が対象で、全業種の事業主に以下の措置が義務化されました。
⑴熱中症の症状について周知する
⑵熱中症疑いの労働者を発見した場合の緊急連絡網、緊急搬送連絡先並びに必要な措置および手順を事業場ごとに予め作成しておく
⑶体制・手順について教育等で周知する
INDEX
マスコミで取り上げられた熱中症対策
労働安全衛生規則が2025年6月1日に改正され、事業主には熱中症対策措置が義務化されました。施行時には多くのマスコミで報道されたので、ご覧になられた方も多いと思います。施行後、実施状況の実例が出てきましたので、今回は併せてご紹介します。
まず、この規則改正の背景として、近年の気候変動により、熱中症による死亡災害が増加していることがあります。熱中症による死亡率は他の災害の死亡率の約5~6倍になっています。熱中症による死亡例では、「初期症状の放置および対応の遅れ」が原因であることが多く、厚生労働省では、熱中症の重篤化防止の観点から規則改正に踏み込んだという経緯があります。
事業主に義務付けられる措置とは
熱中症とは、高温多湿な環境下において体内の調整機能が破綻して起こる症状のことです。熱中症は、室内外問わずり患する可能性があることから、全ての業種の事業主に対して以下の措置が義務付けられました。
熱中症の症状について周知する
熱中症の症状は、めまい・失神・筋肉痛・大量の発汗・頭痛・吐き気・嘔吐・虚脱感・意識障害などがあり、り患している本人は症状に気づかず、倒れるまで分からなかったケースが散見されます。熱中症の自覚症状を知らない労働者が多いことから、熱中症の症状についての周知をする措置が義務付けられました。
熱中症疑いの労働者を発見した場合の緊急連絡網、緊急搬送連絡先並びに必要な措置および手順を事業場ごとに予め作成しておく
①事業場における緊急連絡網、緊急搬送先及び所在地など
② 作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等、熱中症による重篤化を防止するために必要な措置の実施手順の作成など
体制・手順について教育等で周知する
周知の一例として「朝礼等での周知」「休憩所・廊下など見やすい場所への掲示」「イントラ等での通知」など口頭ではなく、複数の手段を組み合わせて周知する事が望ましいとしています。
熱中症対策の対象となる作業場とは
熱中症対策の対象となる作業場は、暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)28以上または気温31℃以上の環境下において、継続して1時間以上または1日あたり4時間を超えて作業が行われることが見込まれるところです。なお、日本気象学会「日常生活における熱中症予防指針」ではWBGT28以上31未満を「厳重警戒」、31以上を「危険」としています。
他社事例とまとめ
最低限、義務化された措置は行ってください。
対策の実例として、水冷送風機を常時稼働させる、水分補給チェック表の作成、冷蔵庫・クーラーボックス等に保冷剤や塩飴を常備、日よけやミストシャワーの設置などがあります。また、テントや休憩所を設置する事ができない場合、現場近くのアパートなどを休憩所として契約している会社もありました。入社2年未満の新人には重点的に声掛けをするという工夫をしておられる会社もあり感心しました。
これらの整備は、求人アピールにもなりますし、何より災害防止の観点からご一考いただきたいと思います。
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