「働きがい」に地域の視点を
公開日:2025.09.22
我が国の出生数が70万人を下回ったという発表を受け、「このままでいいのか」と危機感を抱いた方も多かったのではないでしょうか。制度的な整備(働き方改革関連法や育児・介護休業法等)が進んでいますが、歯止めがかかっていないのが現状です。また、若年層の都市部への流出が人口減少を加速させているという状況は、地方だけの課題ではありません。地方創生2.0で掲げる「魅力ある働き方、職場づくり、人づくりを起点にした社会の変革により『若者・女性に選ばれる地方』をつくる」ことが求められます。
魅力ある働き方は、「働きやすさ」と「働きがい」の面から捉えられます。働きやすい職場とは、仕事と生活の両立や子育てしやすい就業環境が整っていることです。厚生労働省の調査(2024年)によると、18~25歳の男女ともに約8割が「仕事と生活の両立を意識して会社を選ぶ」「仕事も育児も熱心に取り組むつもり」と回答しています。一方、「働きがい」では地域働き方・職場改革等の推進会議(内閣官房)において、「進学を機に都市部へ転出した若者が就職時点で地元に戻らない傾向」があるとし、その要因に「①やりがいがある、能力を活かせる就職先、②待遇面」を挙げ、特に若年女性にその傾向が強いとされています。
今や「働きやすさ」は当然の基盤とみなされつつあり、本当に意味を持つのは「働きがい」をいかに整えていくかになります。まず求められるのは自己実現や達成感。仕事ぶりや成果をきちんと評価することも重要です。ただ、これらも今や基本条件と言えます。人的資本の情報開示義務化など、既に基本的な企業活動の一つと認識されているからです。
私が本稿の「視点」で提起したいのは、「働きがい」に地域の視点を取り入れるという考え方です。当県でも東中南予がそれぞれの課題を抱えますが、地域の活性化をセットで考える必要があります。「働きがい」には「社会的貢献」という観点がありますが、仕事を通じて、地域における公的な目標に携わり、そこに誇りを持ち、やりがいを見出してもらう。地域振興や人づくり、自然や文化、伝統など、様々なアプローチが考えられます。地域の企業が、地域貢献の要素を仕事に盛り込み、あるいは見える化し、自治体やメディアが評価するなどして、「地域の発展(地方創生)×地域の職場ならではの働きがい」を作り出し、発信していければ、と思うところです。
もちろん、まずは「働きやすい職場づくり」に取り組んでもらい、資金やノウハウに課題がある場合には、助成金などの各種支援メニューの活用促進を図るなど、労働局としても、積極的に取り組んでまいります。
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