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米国の税制改正OBBBAについて 酒井啓司税理士事務所 税理士 / 酒井 啓司

経営・実務Q&A

米国の税制改正OBBBAについて
酒井啓司税理士事務所 税理士 / 酒井 啓司

公開日:2025.09.12

いよぎん地域経済研究センター

Q. 米国では、「一つの大きな美しい法案(H.R.1, “the One Big Beautiful Bill Act”)、以下「OBBBA」)が成立したと聞きました。どのような内容なのでしょうか。
A. OBBBAは第1次トランプ政権時代に創設された減税措置を2026年以降も継続することが基本となっており、新たな減税措置や歳出削減項目なども盛り込まれています。非常に広範な内容であり、また日本と異なる税制であることから、特徴的なものについて説明します。

税制改正項目の概要

個人所得税

2025年末に期限切れを迎える予定だった所得税率や基礎控除などの減税措置を恒久的に維持しつつ、新たな減税項目が追加されました。

法人・国際課税

即時償却制度の拡充の他、米国外への流出は課税強化+米国内への還流は課税軽減という措置が強化されました。

クリーンエネルギー関係

ESG関連税額控除、EV・省エネ住宅関連税制の適用廃止などが行われました。

遺産税

遺産税の基礎控除額は、2025年で13,990千ドルでしたが、2026年に5,000千ドル(インフレ調整前)に戻る予定でした。OBBBAにより、2026年以降15,000千ドルで恒久化され、さらにインフレ調整が行われます。

個人所得税の改正(一部)

SALT控除の引上げ

SALT控除とは、連邦所得税を計算する際に州税(State)と地方税(Local)を控除する制度です。対象となるのは、州所得税と固定資産税です。現在の対象10,000ドル(夫婦合算)が40,000ドルまで引き上げられます。なお、この措置は2028年までの時限措置です。控除額が増えるということは、連邦所得税について減税となり、富裕層の可処分所得を押し上げることになります。

残業代控除、チップ控除

残業について25,000ドル(夫婦合算)、チップについて25,000ドルの非課税措置が設けられます。こちらも2028年までの時限措置です。

法人税関係の改正(一部)

即時償却制度の拡充

耐用年数が20年以下の事業用資産に係る即時償却制度(ボーナス償却)の償却率が100%に復活(2025年は40%)します。また、内国歳入法179条による即時償却の上限100万ドルが250万ドルに引き上げられます。

研究開発(R&D)費用の即時損金化

現在は償却制度となっている開発費用について、米国内の支出に限定して、即時償却が選択できるようになります。

ESG関連税制の改正(一部)

2032年まで適用されることになっていたクリーン自動車にかかる税額控除が、2025年10月以降に取得する車両から適用廃止となります。また、省エネ住宅改修などの税額控除措置も、2026年以降に供用開始した資産から適用廃止となります。

日本の税制改正への影響

断定的なことは申し上げられませんが、日本の税制の中には、米国の税制に影響を受けた制度もあり、これに関連する制度について国内でどのような改正となるかという点については注意する必要があります。
また、減税による財政面に対する影響も注目されています。米国の財政に負荷がかかれば、金利や為替に影響する可能性がありますので、税制とは別の視点でも注目しておきたいと思います。

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