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県内大学生の就職観に関する調査 ~就職・採用で学生と企業が重視する項目にギャップあり~

調査レポート

県内大学生の就職観に関する調査
~就職・採用で学生と企業が重視する項目にギャップあり~

公開日:2025.09.22

中井 尭也

愛媛県では若年層の県外への転出超過が続いており、人口減少の大きな要因となっている。前月のmini調査レポート「新卒採用市場は厳しい競争環境続く」では、県内企業の新卒採用について調査しており、大学生の新卒採用市場は厳しく、従業員規模の小さい企業ほど新卒採用離れが進んでいることが分かった。
今回の調査では、愛媛大学と松山大学の学生を対象に就職観に関するアンケートを実施して県内大学生の就職観をとりまとめるとともに、前月のmini調査レポートで示された企業の意向などと関連付けて、就職に関する現状を述べる。

県内大学生の県内就職状況

県内就職割合

2024年度に愛媛大学と松山大学の学生が県内に就職した割合は43.4%で、2021年から低下傾向にある(図表−1)。

出身地域

愛媛大学と松山大学の学生の出身地域をみると、約半数が県内出身者であった。愛媛以外の四国の出身者は14.9%だった(図表−2)。

出身地域別の県内就職割合

県内で就職した学生を出身地域別でみると、県内出身者は72.8%、県外出身者は27.2%だった(図表−3)。
また、県外出身の学生を就職地域別にみると、県内就職は24.8%、県外就職は75.2%であり、県外出身者の約4分の1が県内に就職している(図表−4)。

アンケート方法

愛媛大学と松山大学の学生を対象に以下の調査方法で就職観に関するアンケートを実施した。

アンケート結果

就職希望地域

就職希望地域を尋ねると、「愛媛で就職したい」と答えたのは51.0%、「県外で就職したい」と答えたのは49.0%だった。出身地域別では、県内出身者の72.5%が県内就職を希望したが、県外出身者では17.5%となった(図表−5)。

1.で述べたように、愛媛大学と松山大学の学生の県内就職割合は低下傾向にあるものの、アンケート結果では県内出身者・県外出身者ともに、愛媛で就職したい学生の割合が上昇する傾向がみられる。

愛媛県内で就職を希望する理由

続いて、県内出身者で県外就職を希望する学生に理由を尋ねたところ、「都会で生活したい」(41.0%)が最多となり、次いで「愛媛にない業種・職種がある」(21.8%)、「親元を離れたい」(21.8%)となった(図表−7)。

愛媛県外で就職を希望する理由

続いて、県内出身者で県外就職を希望する学生に理由を尋ねたところ、「都会で生活したい」(41.0%)が最多となり、次いで「愛媛にない業種・職種がある」(21.8%)、「親元を離れたい」(21.8%)となった(図表−7)。

就職の際に重視すること

就職の際に重視することを、①自身が求めること②就職先に求めること③労働条件の3つに分けて尋ねた。

①自身が求めること
「重視する」、「やや重視する」と答えた割合が高かった項目は、「やりがい・達成感がある」(92.0%)、「自分のやりたい仕事・業種である」(92.9%)となった(図表−8)。学生からは、「自分のやりたい仕事でなければモチベーションが続かない。」などの声が聞かれた。

②就職先に求めること
「重視する」、「やや重視する」と答えた割合が高かった項目は、「職場の雰囲気が良い」(97.5%)が最多となり、次いで「安定性・将来性がある」(94.8%)となった(図表−9)。一方で、「SDGsに取り組んでいる」(52.5%)を重視する割合は最も低く、学生からは、「SDGsは取り組んでいて当たり前だと思う。」などの声があった。

③労働条件
労働条件について尋ねたところ、「重視する」、「やや重視する」と答えた割合が高かった項目は、「休日・休暇が多い」(95.9%)、次いで「給与水準(初任給など)」(95.2%)となった(図表−10)。

全体を通してみると、学生はやりがいや達成感を重視する傾向にあり、企業には職場の雰囲気の良さ、安定性・将来性などを求めていることが分かった。また、労働条件では休日や給与水準をはじめ全体的に重視する傾向にあることが分かった。

就職後の意向

就職後の意向を尋ねたところ、「最初の就職先で長く働きたい」(45.6%)が最多となり、次いで「労働条件等に不満があれば、転職を検討したい」(23.3%)となった(図表−11)。学生からは「職場の人間関係で、精神的な苦痛があれば転職したい」などの人間関係のトラブルを原因とした転職意向の声が多くみられた。

県内企業・産業の認知について

県内の地域別の主要な企業や産業の認知度を尋ねると「よく知っている」(4.1%)、「少し知っている」(47.8%)が合わせて51.9%と半数を超えた。一方、「ほとんど知らない」(41.5%)、「知らない」(6.6%)を合わせて48.1%となった(図表−12)。

また、具体的な情報源を尋ねると、「大学の授業」が49.6%、次いで「インターネットやテレビなどのメディア」が36.8%となった(図表−13)。学生からは、「大学講義で知る県内企業は有名企業が多く、中小企業を知る機会はほとんどない」との声が多くあった。

学生と企業が就職・採用活動で重視する項目

学生が重視する企業の採用活動

学生が企業の採用活動で重視する項目を尋ねたところ、「職場体験・インターンシップの充実」(89.3%)が最も多く、「労働環境・働くイメージに関する情報の発信」(83.1%)、「内定後の継続的な交流」(77.1%)が続く(図表−14)。

学生・企業間のギャップ

アンケート結果を踏まえ、前月のmini調査レポートで企業が採用活動において重要視する項目とのギャップをみると、「労働環境・働くイメージに関する情報の発信」が46.9ポイント、次いで「内定後の継続的な交流」が46.1ポイントであった(図表−15)。

最もギャップが表れたのは「労働環境・働くイメージに関する情報の発信」であり、前述したように、学生が就職先に求めるのは「職場の雰囲気」が最も多い(3.参照)ことからも、実際に働く職場の労働環境などに関心が高いことが分かる。企業には、イベント・説明会やインターンシップ、SNSなどで、学生がより具体的なイメージを持てるような情報発信の工夫が必要だろう。
また、「内定後の継続的な交流」もギャップが大きい結果となった。前月のmini調査レポートでIRCが推計した結果によると、大学生の内定辞退があった企業は約4割となっており、内定辞退の防止策も重要な課題となっている(図表−16)。

おわりに

県内企業は新卒者を確保するために、従来からイベントや説明会、インターンシップの受け入れなどに力を注いでいる。しかし、アンケート結果では、約半分の学生が県内企業や産業について知らないと答えており、情報を入手する機会も大学の授業やインターネットが多く、情報発信における課題は残る。
また、最近では規模の小さい企業ほど新卒採用離れが進んでおり、愛媛大学と松山大学の学生の県内就職割合が低下傾向にあることは、県内の新卒採用市場の厳しさを表している。
一方、アンケート結果では県内出身者・県外出身者ともに、県内に就職したい意向を持つ学生の割合は上昇している。このことは、新卒採用を予定している県内企業にとってプラスの材料であろう。
前月のmini調査レポートで調査した企業の意向とあわせて、就職・採用活動における学生と企業が重視する項目を比較すると、「労働環境・働くイメージに関する情報の発信」、「内定後の継続的な交流」などでギャップがみられた。新卒採用市場は厳しく、応募者数の大幅な増加が見込めないなか、県内企業が採用者を確保する一つのカギは、このギャップの解消ではないだろうか。
最後に、本調査に協力いただいた大学生の皆様および大学関係者の皆様に、心よりお礼申し上げます。

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