【タイ】
タイのペット事情
公開日:2025.12.18
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はじめに
タイの合計特殊出生率は2024年に1.20となり、日本の1.22を下回っています。ASEAN諸国の中ではシンガポールの0.95に次いで低く、日本同様にペットを家族として考える人が増加しており、バンコク中心部を歩いていてもペットに関連する店舗が続々とオープンします。
今回は、10月にバンコクで開催された「ペットフェア東南アジア2025」、およびタイのペット事情についてお伝えします。
第4回ペットフェア東南アジア2025
「ペットフェア東南アジア」は、ペット事業者向けに毎年開催されるタイ国内最大規模の展示会です。今年は10月29日から31日まで開催され、ペットフードやゲージ、玩具、おむつ、消臭剤といった多岐にわたる事業者が参加していました。37ヵ国から447社が出展し、81ヵ国の11,169名が会場を訪れました。国別の出展社数では、タイが最多となる116社、次いで中国88社、韓国55社、日本25社とアジアが中心となっていますが、カナダ13社や米国13社など欧米企業も複数出展していました。
取引先が出展されていることもあり、31日に訪れましたが、世界各国のバイヤーと思われる人達が各ブースで商談している姿が目に付きました。また、ペットの入場可能ということもあり、ペットを連れて歩いている参加者も見かけました。
タイ人とペットの関係
仏教国のタイでは動物を大切にすることが重要とされ、仏教寺院では僧侶が野良犬を保護している姿を見かけます。僧侶は特別な存在として崇められており、一般市民の愛護精神を養う役割を果たしています。
また、タイの正式名称はタイ王国であり、国民は国王に対して深い尊敬の念を抱いています。特に国民からの人気が高かった前国王のラーマ9世は、バンコク市内で拾った愛犬を育てている姿がメディアで報じられ、その姿を見た国民が犬を大切に扱い、野良犬の保護施設などが相次いで建設されました。
経済の発展や少子化により、ペットを家族として扱う人達が増加しており、ペットへの健康意識の高まりから機能性フードやペット医療の需要が増加しています。医療面では24時間営業の動物病院も開院しています。この病院は白内障手術にも対応しており、CTスキャン装置やMRI装置 といった設備まで完備しています。
タイのペット市場
2024年におけるタイの犬・猫用ペットフード輸出額は 約27億ドルに達し、前年比で29%増という高い成長率となっています。ペットフードの輸出額は、ドイツ(33億ドル)に次ぎ、世界第2位となっています。
タイのペットフードの強みは高い品質ですが、実はツナ缶との関係があるといわれています。
タイは人件費が安価であったことやマグロの漁獲エリアが比較的近く、輸送費用が抑えられたことから加工地として栄え、現在では世界で製造されるツナ缶の2割がタイで製造されています。
近年のペットブームもあり、ツナ缶よりも付加価値の高いペットフードを製造する企業が増えています。
首都バンコクの平均給与は2~3万バーツ(約10~15万円)といわれています。タイの大手銀行TTBのシンクタンクが公表したデータによると、1ペットの飼育コストは年間7,745バーツ(約4万円)となっています。また、ペットを家族の一員と考えている飼い主は、年間41,100バーツ(約21万円)をかけてペット用具などを購入しています。
タイ国内で飼われているペットは、犬が1,200万匹、猫が800万匹であり、この両者で大半を占めています。自宅にいる時間が増え、生活に少しゆとりのある高齢者がペットを飼い、ペット用の支出を増やしていると思われます。
おわりに
私は、タイに赴任して1年半になりますが、タイのスーパーやショッピングモールなどで、ペット用品を販売している棚や催事店舗を見ることが多く、建築途中のコンドミニアムに「ペット飼育可能」と書かれた横断幕を見かけるなど、ペット関連の需要が高まっていることを日々感じています。
一方で、私の住んでいるエリアから2駅ほど離れた場所で2024年11月に狂犬病に感染している野良犬が発見される状況も発生しています。
今回のレポートを通して、改めてタイに関する理解を深めることができました。引続き、タイの最新情報や日本文化との違いについてお伝えしていきます。
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