世界最大級の自転車国際会議「Velo‒city」
2027年5月に愛媛で国内初開催
公開日:2025.10.31
愛媛県が誘致を目指していた「Velo‒city」(自転車国際会議)の開催が、2027年5月25日(火)〜28日(金)に決定した。今回は、「Velo‒city 2027」の概要と愛媛県が取り組んでいる自転車施策などについて紹介する。
INDEX
「Velo-city」とは
「Velo‒city」は、欧州サイクリスト連盟(ECF)と開催都市が共催で1980年から年に一度開かれる世界最大級の自転車国際会議である。「Velo(ベロ)」はフランス語で自転車を意味する。
自転車政策に関わる行政関係者や研究者、愛好家などが一堂に会し、学術会議として自転車を活用した交通やまちづくり、観光など様々なテーマで議論され、世界に誇れる自転車施策の検討を行う。また、展示会や一般市民も参加できる自転車パレードなどが開かれ、自転車利活用の促進を図る機会にもなっている。
2025年はポーランドのグダニスクで開催され、60以上の国・地域から約1,400人が出席した。大型ホールには70以上の関連ブースが設けられ、自転車をはじめ、駐輪システムや安全設備など最新の技術や製品、サービスなどが展示された。その規模感について自転車の専門家は「経済のダボス会議」「環境のCOP」「自転車のVelo‒city」と呼んでいるそうだ。
「Velo-city 2027」愛媛で開催
今年1月、2027年の「Velo‒city」の開催が愛媛に決定したことが発表された。日本での開催は初めてで、アジアでも2016年の台湾(台北)以来2回目の開催となる。
愛媛県は、2024年9月に誘致申請書を提出し、中村知事らがしまなみ海道の魅力だけでなく、愛媛の自転車政策をPRしたことが功を奏し、2027年の開催地に選ばれた。
計画では、世界各国から1,000名を超える参加者が訪れ、全体会議や分科会、テクニカルビジット(視察旅行)、自転車パレードのほか、愛媛独自の出席者を対象としたエクスカーション(小旅行)や一般県民等を対象とした併設イベントなどが実施される予定だ。
愛媛県が進める自転車施策
愛媛県は、2011年から主要施策のひとつとして『自転車新文化の推進』に取り組んでいる。自転車新文化とは、「しまなみ海道」に代表されるサイクリングを核にした交流人口の拡大による地域活性化につなげるとともに、県民に自転車を活用したライフスタイルを提案し、「健康」「生きがい」「友情」を育み、生活の質の向上を図ろうとする取り組みである。
現在(2023~26年度)、「第2次自転車新文化推進計画」に基づき、安全で快適な⾃転⾞利⽤環境の創出、公共交通機関との連携、サイクリスト向けサービスの充実などに取り組まれている。今治市では、サイクリング観光の振興と市民の自転車利用促進のため、しまなみ海道と今治駅を結ぶ市道等で自転車専用通行帯の整備が進められている。
2027年の愛媛開催に向けて
今年4月に県庁内に「自転車国際会議推進室」が設置され、8月には関係団体等で構成される「Velo-city 2027 Ehime実行委員会」も立ち上げられ、開催に向けた準備が進められる。
愛媛県では「Velo-city」開催による効果として、大会開催による直接的な経済効果や自転車先進県「愛媛」の知名度向上、愛媛の観光・物産・食などのPRの場になることなどを見込んでいる。
9月には、松山市で「愛媛県自転車新文化推進フォーラム」が開催され、パネルディスカッションでは、欧州における自転車と公共交通機関との連携や自転車走行環境の快適化などの事例紹介、「Velo-city」開催の意義などについて議論された。自転車・先進地であるオランダの有識者からは、「経済効果もあるが、持続可能な都市交通手段として自転車を活用するきっかけにしてほしい」「日本は、女性や高校生が自転車を日常の移動手段として利用している。世界でみても先進的で、日本・愛媛での開催を注目している」といった意見があった。
また、愛媛県の担当者は「開催を機会に、しまなみサイクリングの良さはもちろん、交通手段・モビリティとしての自転車の利活用、走行空間の整備を国内、アジア、豪州などに広めたい」と話し、「Velo-city」成功への期待を膨らませていた。
おわりに
身近な移動・交通手段の確保、コンパクトシティのまちづくりを推進するうえで、今後、自転車の役割はますます高まるものと思われる。
「Velo-city 2027」の開催をゴールにすることなく、しまなみ海道の世界ブランド化や世界各国への情報発信や連携、開催都市としてふさわしい自転車走行環境の整備、さらには、愛媛県が進める「自転車新文化」の更なる深化と拡大にも期待がかかる。
一覧へ戻る